【3】一部の官僚に途方もない権力を与えた「政治主導」 7年余りの間に、この政権は専制政治に確実に近づいてしまった 白井聡 京都精華大学人文学部准教授 安倍政権を形容するキーワードのひとつが「私物化」であった。 私物化は法治の崩壊と表裏一体をなす。法治の反対は専制であり、専制政体とはつまり、国家そのものが専制権力の私物であるような政体である。7年余りの間に、この政権は専制政治に確実に近づいてしまった。 法が終わるところ、暴政が始まる それを象徴する出来事が、「官邸の守護神」と呼ばれた黒川弘務・東京高検検事長の定年延長問題であった(本年2月)。国家公務員法と検察庁法における定年に関する規定の優先順位を逆にするという法解釈の変更を行なって定年延長を決めたというのだが、森雅子法相はこの変更を「口頭決裁」したのだという。行政の大原則である文書主義の否定である。 新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)は、