書くことが癒しになるという結論 フランスでベストセラーになったヴァネッサ・スプリンゴラ著、『同意』(内山奈緒美訳、中央公論新社)をご紹介したい。小児性愛の性向を持つ作家Gと14歳で交際した経緯とそこから受けた傷を、彼女の目線からつづったものだ。以前、この連載でご紹介した林奕含リンイーハンの『房思琪ファン・スーチーの初恋の楽園』によく似たテーマでもある。 自殺した林奕含の本が、古典の素養豊かな予備校教師による女子中学生への性的虐待をテーマとした小説であったのに対し、スプリンゴラの本は、まさに自らの小児性愛遍歴を文学作品につづってきた著名な作家、ガブリエル・マツネフによる、自分に対する性的搾取の事実を告発するものだ。いずれも、恋愛にあこがれる知的な少女に対し、知的優位に立つ中高年男性が、彼女が崇高なものだと信じた文学を用いて性欲のはけ口にしたという点で共通している。
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