圧倒的な存在感でアスリートの頂点に君臨する25歳。 だが、その身体にはある“神秘”が隠されていた。 世界で初めて科学的分析を許されたディレクターが見た、 スプリンターの葛藤と世界記録を生む常識外の肉体とは。 「フォーミー……」 「人類最速の男を楽しんでる?」 「フォーミー……」 あえてそっけない日本語にするならば、「僕にとっては」ということになるのだろうか。 だがその語感は、私ではない何処かに向けて呟かれているようでもあり、あたかも「あくまで僕が勝手に思うことなんだけど……」と前置きをしているような、控えめで頼りないものに聞こえた。 それは、気にしなければ通り過ぎるだけの会話の枕に過ぎなかったし、誰しもが持つただの口癖なのかもしれなかったが、何故だか私の胸に静かに残った。 北京五輪直前、パウエルをあっさり抜き去った“はた迷惑な超人” 通りでは、巨大なサウンドシステムを積んだワゴン車から、数
![<致命的な欠陥との共存を解析> ウサイン・ボルト 「世界最速が背負う秘密の十字架」(小泉世里子)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/fe2afe79056e782114daee539d0cdf62b38f512a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnumber.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2Fd%2Fe%2F-%2Fimg_de662899d5ac5fd325986d1940d397a5283357.jpg)