残るバッター3人で完全試合達成の9回表、マウンドに山井の姿はなかった――。 “不可解”とされた交代劇ばかりが取り沙汰された、2007年日本シリーズ優勝決定戦。チームか、個人か。揺れ続けながら山井が投じた86球は、あの日なによりも美しかった。 その日、山井大介は新しいソックスを下ろした。大学や社会人のころ、優勝のかかったような大事な試合には、一度も履いていない新しいソックスで臨むことにしていた。ちょっとした験である。 「でも、プロに入ってからは止めていました。プロで大事じゃない試合なんてありませんからね。全部の試合に新しいソックスを履くのはちょっともったいないし」 だが、この日は迷うことなく新しいソックスを履くことに決めた。日本シリーズ第5戦。チームは3勝1敗と王手をかけている。この日勝てば、53年ぶりの日本一が手に入る。その試合に自分が先発する。ダイヤをちりばめたソックスを履いたって不自然
![未完の完全試合。 山井大介“決断”の理由(阿部珠樹)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7c6f8cf81fedc53f73666c5a79593ee6e9d4f91a/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fnumber.ismcdn.jp%2Fmwimgs%2F0%2F4%2F-%2Fimg_04d9f4cfde07816ae390ef9351dbde6422900.jpg)