居酒屋の師匠に弟子入りしたことがある。 私を半年で一人前にするため、とても厳しく指導して下さった。 そこで口癖のように言われたのが、「もっと素直になれ」だ。 教えてもらう立場の人間が素直になることは必要だ。 教えてくれる人が長年試行錯誤して身に付けたことは素直に従う。 それが仕事を覚える近道になる。 しかし、師匠は全然素直ではなかった。 自分と違う考えの人には絶対に折れなかった。 どれぐらい素直でなかったのか? それは、頻繁にお客様と口論になっていたぐらいだ。 クレームも多かった。 師匠には、道ですれ違ったら思わず避けてしまうような威圧感があった。 なので、師匠ではなく私たちにクレームを入れてくるのだ。 「なんだあの店長は?他の客と煙草をぷかぷかして、バカ騒ぎして、」と言われたことがある。 カウンターに座っている常連客の横に座り、世間話をする。小さな居酒屋ならではの接客として、これはこれで