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ブックマーク / topnotch.hatenablog.com (25)

  • ファーストキスの呪い - 眠る前に読む小話

    無理やりキスをされた思い出というのは、なかなか消えてくれないものだ。特に、それがファーストキスならば尚更。 小学校4年生の頃だったと思う。よく遊んでいた公園に私たちはいた。4人だった。男の子2人と女の子2人。 前後の文脈は全然覚えていない。ただ、なぜか私とその男の子がキスをすることになった。 確か、男の子が私のことが好きで。 キスの持つ意味合いや概念なんて何もわからない年齢だったけれど、でもキスは特別というのを知っていて。テレビやドラマで見ているからだ。 私はその男の子に何も感情を持っていなかったのでキスなんてしたくなかった。でもゲームかなにかで私が負けて。そして流れでキスをされることになった。 その頃のノリは、子供ながらにあがらいがたく。「やめて!」といえばいいのだけれど、その一言で場の空気を壊すことを恐れて、私はその人とキスをすることになった。 でも、1つ条件を出した。ハンカチの上から

    ファーストキスの呪い - 眠る前に読む小話
  • 雪の思い出 - 眠る前に読む小話

    この週末、日列島に強烈な寒波が訪れた。東京では、晴れているのに雪が降った。日海側では大きな積雪となった。 テレビで雪のニュースを見る度に思い出すことがある。私の生まれ育った町の雪だ。 北陸のその町は、雪がよく振った。私が住んでいた町は山間部の田舎だったからなおさら雪が降った。 雪が振ると、電車が止まる。いまではもう廃線になってしまった線路だ。けれど、当時は私の小学校までの通勤路だった。 当時は、私だけが電車で学校に通っていた。だから、雪で電車が止まると、私だけが学校にいけないということもあった。 東京の人たちは「雪が降ったら学校休みになって嬉しかったよね」と楽しそうに話をする。でも、私にとって、雪は恐怖でしかなかった。私だけが雪の中に取り残されているような気がした。 雪の静寂の中に包まれたその町では、雪が降ると時間さえも止まってしまったようだった。 ある時、私は雪に怒りをぶつけた。学校

    雪の思い出 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/16
    すき
  • 雨の日 - 眠る前に読む小話

    雨の日だった。 雨の日に、白のジーンズをはいている男性がいた。 その日は雨だから、足元が汚れる。白いジーンはなおさら汚れる。 それでも、彼は白いジーンズをはいていた。 わざわざ今日履かなくとも、と思うけれど、きっと彼なりのポリシーか、理由があるのだろう。 雨の日に白いジーンズをはく男だった。 また、その日も雨だった。 スールでびしょぬれになって歩いている女性がいた。メイクも心なしか少し滲む。 朝は決まっていただろうウェーブのかかった髪の毛もべっとりと雨に濡れる。 スーツが痛むのに、と思った。傘をかえばいいのに、と思った。 でも彼女は、土砂降りの中、スーツで歩きたい気分だったのだ。 それはなんだか分かる気がする。 雨の日は、人々の覚悟が見え隠れする。雨は、建前を洗い流してくれる。

    雨の日 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/16
    Singin' in the Rain…♪
  • メニューと違うものがでてくるレストラン - 眠る前に読む小話

    その店では、頼んだメニューと違うものがでてきた。 そもそもはその店はメニューなんてなかった。座れば、何かが出て来るのだ。 「今日のあなたにおすすめ」という感じで、その人の雰囲気にあったものがでる。ただし、実際のところは「今日の買いすぎた材で作れるメニュー」という事が多かった。他の客がカレーと肉じゃがをべているのを見ると「あ、今日はじゃがいもを大量入荷したんだな」と推測がついた。 他の人がオーダーしたメニューということも多かった。みんなの分を一緒に作れば早いからだ。だから、隣の席で「オムライス」と頼むのを聞いたら、「あ、今日はオムライスになりそうだ」なんてことを想像する。とはいえ、その前の客が「チャーハン」と頼んでいたら、そのオムライスさえもチャーハンになるので、結局のところ、何がでてくるのか想像もできなかった。 そのため常連客はメニューなんて見なかった。意味がないからだ。 ただはじめて

    メニューと違うものがでてくるレストラン - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/13
    店っていうか、家だね。旨かったらお客さん来そう。
  • 誕生日なんておめでたくない - 眠る前に読む小話

    「お誕生日おめでとう」という言葉に違和感を感じていた。 そういうと、こじらせた「中二病」のように聞こえるけれど、僕にとっては、結構、重要なテーマであった。 どういうことか。 人は言う。「お誕生日おめでとう」と。それの「何がめでたい」のかがいまいちよくわからなかったのだ。 正確にいえば儀式として「おめでとう」という慣習があるのはそれは良い。人は生誕祭を祝うのは古来からあったため、その習わしとは理解できる。ただ、言われた方は別に、それほどめでたくないのではないか。 というのも、誕生日は、「自分で勝ち取った記念日」ではない。 「たまたま、1年に1度、回ってくる日」である。だから、それは「大会で優勝おめでとう」とか「賞おめでとう!」とかの「おめでとう」とは質が異なり、「ほっておいてもくるおめでとう」というか。 こういうと人はいう。 「いや、あなたを生んでくれたお母さんへの感謝のおめでとうなんだよ。

    誕生日なんておめでたくない - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/09
    ひょっとして。お誕生日おめでとうございます。良い一年を!
  • 祈り - 眠る前に読む小話

    で生きていると、漢字を使った訓話を耳にすることがある。 たとえば、ある格闘技の先生は言う。 - 武道の武という字は「矛(ほこ)」を止める」と書く。すなわち、武道とは争いを止めるために手段であったのだ - 忍というのは、心の上に刀を置く、と書く。すなわち、忍耐とは、我慢することではなく、いつでも戦える刃を持ちながらも、表に出さないことを言うのである といった風に。 あるいは、人はこう歌う。 - 愛は真心で、恋は下心 心という字が愛は真ん中にあり、恋は下にあるから、とか。 そのようなたとえを聞く度に「なるほどなー」と思いながらも、いかようにでも解釈できる漢字のずるさと面白さを混ぜ合わせた感情を抱く。 ただ、最近、そのような話から発見をすることがあった。それがこちらだ。 - 念じるとは「今を心にする」と書く。つまり、念じるということは、今だけのことしか考えないようにする、ということだ という

    祈り - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/09
    なるほど、禅か。
  • 鬱じゃない人はおかしい人? - 眠る前に読む小話

    「「抗うつ剤を飲むと根拠のない自信が湧いてくる。つまり、正常な人は根拠のない自信が常に満ち溢れている」という事実」という記事を興味深く読んだ。 そこでも紹介されているのが、「の人の方が現実を正しく認識している」という研究結果だ。それの真偽はともかくとして、概念としては理解できる。 つまり「世の中を正しく分析するとにならざるを得ない」というものだ。 それを文学的な表現で修飾してしまうと、つまりはこうだ。 日は従来に比べて産業で世界で誇れるものは少なくなっている。さらに少子化がおいうちをかけるように日の存在感をなくす。今までの経済成長は期待できず、日の景気は下り坂になることは避けられない。 はたまたミクロの社会に目を落としてみても、昔みたいな地域のつながりもなくなり、学歴も確固たる拠り所ではない。会社も終身雇用ではなく守ってくれる存在ではなくなった。結婚恋愛をする者も少なくなる。そ

    鬱じゃない人はおかしい人? - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2017/01/01
    グッド
  • エスプレッソで - 眠る前に読む小話

    年末の足音も聞こえる冬の平日。ただし、表参道には夏よりも冬が似合う。表参道のけやきには、イルミネーションがあるからだろう。 そんな「俺の時代」という顔をした表参道を歩き、待ち合わせのカフェに入る。花屋さんのビルの2階にあるそのカフェは、有名なチェーンではないけれど、そこそこの広さがあり、ちょっとした待ち合わせに便利な店だ。対して、スターバックスはいつも混んでいる。混んでいるのさえも、スターバックスの装飾のようで。 店内を見渡すと左の奥に見慣れた後頭部。濃い茶色の肩にかかったボブ。他の人には見分けがつかなくとも、何百回と見てきた僕には、そのボブが「いつものボブ」だと見分けがつく。あの色や長さや形はどこにでもあるものもかもしれないけれど、「あの色」と「あの長さ」と「あの形」の組み合わせは、他にはない。 存在を認識した上で、コーヒーのカウンターに並び、モカを頼む。なぜか冬はモカを飲みたくなる。そ

    エスプレッソで - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/12/15
    知り合いのイタリア人はめちゃ甘いエスプレッソ飲んでたなぁ……。その人は「君の手、カプチーノみたいにあったかい」と言った。
  • 独りの帰り道 - 眠る前に読む小話

    年末の金曜日の仕事帰り。電車の中には、酔っ払いが溢れかえる。仕事で遅くなった自分にとっては、このアルコールの匂いが疎ましい。 駅について降りる。駅前のコンビニを通り過ぎて、ロータリーを回る。 駅前で電車から降りる人を待つタクシーや待ち合わせの人たちを見て軽く嫉妬をする。こんな寒い日は、私も誰かと一緒に帰れたらな、と。いつもはコンビニで買う夕も今日はなんだか買う気にもならない。眩しい世界を見たくない。 いつもの坂が見えてくる。何百回と通った道なのに、なぜか今日はこの坂がいつにもまして疎ましい。次に引越する時は、坂のない家に住もう、と思うけれど、一体、いつ引越するんだろう。 坂を登り、小さなアパートの小さな部屋に帰る。オートロックもない小さな部屋。ふと思いついたように、「ただいま」と口に出す。何も返してこない静寂。思わず出るため息。 いつの間にか一人暮らしにも慣れてしまったけれど、こういう疲

    独りの帰り道 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/12/12
    うっ 泣きたくなる
  • インターネットルネッサンス - 眠る前に読む小話

    2016年冬、Web業界で大きな変動が起こった。DeNAのWelqを発端に、キュレーションメディアの課題が指摘され、DeNAやリクルート、サイバーエージェントなど多くのメディアが自社キュレーションを閉鎖・記事削除を行った。 この出来事は、インターネットの歴史では「Welq事件」ということで記載されている。なお、このWelq事件は年があけた2017年にも継続し、まるでそれは、浜辺の焚き火のボヤが草原に着火し、くすぶった火種が山火事を生むかのような炎となった。すなわち、その炎上は日のインターネットメディアを焼け野原にしたのだ。ほぼすべてのキュレーションメディアが死滅した。それでわかったことは日のメディアはほとんどキュレーションメディアに支配されていたということだった。インターネットの検索結果のほとんどが変わってしまった。 キュレーションが滅びても、人々の怒りは収まらなかった。その矛先は、新

    インターネットルネッサンス - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/12/09
    “Blockquote運動”なんかオシャレ。このブログは独自性がある。すき。
  • Amazonダッシュボタンで誰がくる? - 眠る前に読む小話

    Amazonから、Amazon Dash Button というものがリリースされたらしい。 いわば「ボタン」。 ボタンごとに「アリエール」や「リステリン」など日常品が設定されていて、ボタンを押すとそれが届く。 事前に、自分が「ボタンで買いたい商品」のボタンを買っておく必要がある。500円で、初回オーダー時に、そのお金は総裁される。 そのボタンは冷蔵庫や洗濯機の横においておこう。それを買いたくなった時は、そのボタンを押せば注文ができ、家に届くという話。ボタン1つで届く。なんだか魔法みたいだ。 何より、便利さというよりも「ボタン」という概念がかわいい。 我々がもっとも身近なボタンは、ファミレスのボタンだろう。あれを押せば誰かがやってきてくれる。まるで魔法のランプ。 このボタンもそんな風に誰かを呼び出せればいいのに。 カナダで働く彼や、昔に別れたお父さんだったり。 卓上のボールペンをカチカチしな

    Amazonダッシュボタンで誰がくる? - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/12/07
    わたしは何のボタンにしようかな〜
  • 飲食店が考えるベストな食べログの点数 - 眠る前に読む小話

    知り合いで飲店を経営する若手がいる。彼が言う。 「べログの点数は3.4くらいがちょうどいいんだ」と。 どういうことか? べログは3.5点を超えると、★が赤くなる。つまり「良い店」を考える基準として3.5点を考える人が多いようだ。 その結果、お店が3.5を超えると、「味にうるさい人」が増えるということになる。 よって、店は、より「厳しい目」で店が評価される。味だけではなく、雰囲気やコスト、立地、サービスまでも。そうするとスタッフの負荷は高い。何より「3.5だからいい店だよね」という目線で店にくる。すると、期待はずれの点があれば、厳しく評価される。 逆に3.5以下でいれば、「点数をあまり気にしない人」「そもそもべログを見ない人」が集まることになる。期待値も高くない。スタッフもゆうゆうと働くことができる。 それらを考えると、べログの点数は3.4くらいが一番いいのだとか。

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    CALMIN 2016/12/02
    わかる
  • 口紅のプレゼント - 眠る前に読む小話

    「口紅がいい」 「誕生日に欲しいものある?」と聞いて、返ってきた言葉がソレだった。 口紅で思い出すことがある。大学時代にアメリカに留学していた俺は、家族にお土産を買って帰る必要があった。その時に年上の彼女に言われたのが「このブランドのこの番号の口紅が定番で喜ばれるわよ」というものだった。 それ以来、海外旅行では、その口紅を馬鹿の一つ覚えのように買って帰っていた。26歳の時に彼女に怒られるまでは。 「ねえ。口紅のプレゼントの意味って知ってる?」。チャンギ空港の免税店で口紅を探す俺に彼女は言った。「あなたにキスしたいっていう意味があるのよ」。彼女は僕の頬を手ではさみながらそう言う。それ以来、俺は口紅を人にプレゼントすることを辞めた。 それを思い出しながら、悩んで買ったのは赤い口紅だった。彼女は普段は薄い口紅をしていた。あるいはしていなかった時の方が多いかもしれない。朝、ハグをした時にワイシャツ

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    CALMIN 2016/11/30
  • カバンの持ち手 - 眠る前に読む小話

    あなたがカバンを大切にしたいと思うならば、一番見るべきポイントはどこか知っているか。 見た目でも、ブランドでも、容量でもない。 それは、持ち手だ。 有名ではないブランドでも人気のあるカバンは、たいてい、持ち手がしっかりしている。しっくりくる。まるで吸い付くように。 そうするとどうなるか。重さも感じなくなるのだ。 逆に持ち手があわないと荷物は重く感じる。たとえばスーパーでペットボトルが入ったビニール袋を想像したまえ。あれほど重いものは他にないだろう。 もちろんこれは持ち手と手の接触面を広げるという人間工学的な側面もあるのだが、いずれにせよ、手に馴染むカバンを持つと、もう他のカバンは持てなくなる。 まるでカバンから自分にぶら下がってくれているように思えるのだ。 こういう話をしっているか。あなたは赤ん坊を抱いている。赤ん坊が起きている間はそんなに重くない。しかし、赤ん坊が寝た途端、急にその赤ん坊

    カバンの持ち手 - 眠る前に読む小話
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    CALMIN 2016/11/29
    最後の一文がすてき
  • Amazon戒名 - 眠る前に読む小話

    ※今回は少しブラックジョークです。ご容赦ください 「Amazonのニュースみた?家事代行も始めるそうじゃない」 - そうなの。すごいね。そんなのも手がけるんだ。 「サービスえCといえば、同じく『お坊さん便』っていうのがAmazonで話題になったじゃない。」 - ああ、それ買えば、お坊さんをデリバリしてくれるってやつね」 「デリバリというと、なんかいかがわしい感じにも聞こえるのであれだけど、手配してくれるやつね」 - 安かったらいいよね。どこ頼めばいいかわからないし。ただ、「やべ、今日、じいちゃん他界しちゃった。明日必要だ」という時に間に合わなかったらだめだから、やっぱり、Amazonプライムマストかしら 「いや、Amazonプライムに入ったからといってお坊さんの手配を急いでくれるわけじゃないから。あと、そもそもあれはお葬式とかじゃなくて法事のお坊さん専門だから。そんな『今日死んだから、今日

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    CALMIN 2016/11/27
    “色欲院偏執白下着居士”www
  • 砂漠のバラ - 眠る前に読む小話

    砂漠のバラって知ってる? 違うわよ。その銀座のお店の店名も砂漠のバラだけど、それはもう閉店したでしょ。あと実際に「砂漠のバラ」という花もあるらしいけど、それでもなくって。 「砂漠のバラ」って、ちゃんとした単語なの。Wikipediaにものってるわよ。 自然に石や結晶などでできたものがバラに見えることがあって、それらを砂漠のバラって呼ぶらしいの。 ほら、こんなの。 きれいでしょ。石でできた花みたい。 サハラ砂漠でよく取れるらしいの。サハラ砂漠にはなんでもありそうよね。あとアルプス山脈では実際に赤いのもできるらしいよ。 名前からしてロマンチックじゃない?"砂漠のバラ"なんて。砂漠なんてバラどころか花や木も咲かなさそうじゃない。なのにバラ。 でもね。この砂漠のバラにはもっとロマンチックなことが秘められているの。 これって「もともとこの場所に水があった」という証なんですって。 この結晶は水に溶けた

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    CALMIN 2016/11/26
    す、すごい!(バラには…見えない…)
  • 雪の中の生足 - 眠る前に読む小話

    11月の東京で雪が降った。明治8年以来、初だそうだ。あまりに急な雪にに衣替えを出来ずにうっかり秋のジャケットで家を出ると凍てつく空気が身体を襲った。 - ダウンを出しておくべきだった と思いながらも人で溢れる電車に乗る。携帯では「電車遅延」のアラートがどんどん飛んでくる。 雪がうれしいのは学生の頃までだよな、と思いながら、どんよりとした顔つきの乗客たちを眺める。雪は滑る。寒い。交通機関が麻痺する。何も良いことがない。美しいというのは、いいことだけど。 目的地について駅から出ると、うっすらと雪が積もっていた。こんな日に革は悲劇だな、と思いながらも慎重に歩道を歩く。傘には、みぞれ化した雪が勢いよく降る。 そんな中、前を見ると、「まさか」と思うような格好をした女性が歩いていた。思わず二度見する。 彼女は黒のホットパンツで、生足をこれでもかと露出していた。もっとも上はダウンジャケットを着ていたけ

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    CALMIN 2016/11/25
    ビジュアルを想像したら、やたらに格好良い
  • コーヒー券 - 眠る前に読む小話

    「先日はありがとう。助かったよ。これ、息抜きにコーヒーでも飲んで」と、渡されたのはスターバックスのギフトカードだった。1000円分。 先日、私は彼の仕事を少し手伝った。彼がどうしてもその日中に作らないといけない資料があり、彼は隣に座る私に助けを要請してきた。3時間の残業を追加し、私は彼の作業を分担した。 仕事をしてるとお互い持ちつ持たれつだから、助けることはあまり気にならなかった。何より私は彼を助けたかったし。ただ、こうお礼をしてもらえるとやはりうれしい。 それがお金だったりすると生生しいし、百貨店のギフトカードだと使いづらいけれど、スターバックスのカードは、たしかに気にせず受け取れて、そして、うれしい。 何より「息抜きにコーヒーでも飲んで」という一言が添えられるのがいい。もちろん、「お礼に夕でも」の方がもっとうれしいけど、それだと5日間くらい手伝わなくちゃ。 私はこのカードを使うときに

    コーヒー券 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/11/20
    気取らないギフトの話(今度誰かに気持ちばかりのお礼をしたい時にやってみよう)
  • パンツ切り絵 - 眠る前に読む小話

    以前、パンツをそのままゴミ袋に入れて捨てていたら、ストーカーに漁られていたことがあった。 それ以来、パンツを捨てる時は、ハサミで刻んで捨てていた。 そんな時、レースにハサミを入れていたら、面白い模様ができあがり、「あ、切り絵ができる」と思い立った。そして、私はパンツの切れ端を画用紙に張り始めた。 それが私の「パンツ切り絵」のきっかけだ。 赤いレースの下着3枚で作った東京タワーや、Tバックで作ったベイブリッジ。ブラジャーと組み合わせて作った流れ星。それらを作ってInstagramにあげていたら人気がでて、そして、今のようにお仕事を頂くようになった。 ただ、悩ましいのは、材料が枯渇するということだ。単なる切り絵だと紙があればいい。でも、私のパンツ切り絵はパンツがないとダメだ。しかも、新作だと味が出ない。履いたやつじゃないと。 だから、量産ができない。レプリカさえも作れない。「だから、私の作品は

    パンツ切り絵 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/11/19
    御乱心
  • 床にこぼれた時計 - 眠る前に読む小話

    その時計は20歳になった時に親に買ってもらった時計だった。30歳になり、書い直そうかな、と思っていた時のことだった。 家を出る時にいつも通り卓上に置いた腕時計を取る。しかし、今まで3650日間に起こらないことが起こった。取りそびれ、時計を落としてしまったのだ。床に落ちた時計は、「パリン」と割れた。 すると、その時計から、思い出が溢れ出してきた。 最初に溢れ出したのは、就職活動の頃の思い出だった。僕は、一番行きたかった会社の会社にいる。そして、時計を見ている。面接予定の時間は14時。その10分前に受付の電話をかけようと時計をじっと眺めている僕。時間まであと2分。何回、時計を見たって時間は変わらないのに、何度も時計を見返す僕。 その時の面接では何を話したか覚えていないのに、ただ時計を眺めていたのはよく覚えている。結局、その会社で内定を得ることはできなかった。ただ、思い返すとそれはそれで良かった

    床にこぼれた時計 - 眠る前に読む小話
    CALMIN
    CALMIN 2016/11/19
    しんみり