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夜闇のなか、浮遊砦は音もなく走る。どこに向かっているのか。 砦のあちこちに灯された篝火。ときおり爆(は)ぜた火の粉が、風に遊ばれクルクル舞う。 赤い火の粉とともに、無数の白片がうねり舞っている。海風のメモ。 いや。違う筆跡の紙も舞っている。その数がしだいに増している。 御津流は砦の裏庭にいた。 碇を落とす井戸のそば。海風と智庵のメモを外壁に並べ留め、数歩下がって眺めを繰り返しながら、ぶつぶつ呟いている。 「第1段階は感情。生理的。第2段階は感情の整理。理性が感情に作用。第3段階・・・難しいな。調和か、戦いか、無関心か。第4段階は静寂、と。パラメータは感情と理性にして・・・」 キィは砦の横手にいた。 階段状の観客ベンチがぐるっと巡らされた、テニスコートのような空間。その一角に陣取り、キィはポケットから握りこぶしほどのキューブを取り出した。 「人または異文化には六つの側面がある-外見、言語、外
メモに次ぐメモ、白紙雪が溢れた部屋で、風の呟きがグルグル廻っている。 「異文化接触段階の0、1、1'、2、3・・」 「4から0段階へループ・・・螺旋階段状態の空間モデル?」 「なんか違う、なんか違うぞ! 軸がない・・・」 「コミュニケーションの原子モデル、重力モデル・・・」 「たくさんくぼみのある空間モデル?・・・そこを通過する自分?」 扉をノックする音。風型のまま海風は応えた。 「どーぞー」 開いた扉から、クチダケ鳥が顔を出す。 「お、やってるやってる! ・・・て、何してるん?」 「異文化接触と反応と交流の数式化。もしくはモデル化。ってとこだねー」 「砦でやらはったらええのに。ここより広いで」 「まだメモ段階だからね。もう少しまとまったら」 続けて顔を出した智庵が、目を丸くした。 「すごい科学的な方向になっておりますね。ネット住民分類学の時のような立体図ではなく?」 「僕もそう思ってたけ
「じゃ、持ってくるから」と言い置き、海風は海風に姿を変えてどこかへ吹き去った。 クチダケ鳥と智庵が思い出話などしていると、やがて東の海の端に、なにか黒い物体が現れた。 つばの広い山の高いソンブレラ帽のような影形。みるみるこちらに近づいて来る。 ぐるりとそびえる高い壁、ツンと突き立つ物見櫓(やぐら)。櫓のてっぺんにはためくは、穴の空いた灰色旗。 あれが浮遊砦か。波立つ海面の十数メートル上を音も無く走る。 飛んで出迎えたクチダケ鳥に、砦を押してきた風がヒュウヒュウうなる。 「お待たせー。そこにある碇(いかり)、落としてくれない?」 クチダケ鳥は上空から砦を見下ろした。 敷地のすみに、人の体ほどある大きなドラム。長々と鎖が巻かれている。 舞い降りてみると、鎖の先端に銀碇が付いている。人の手のひらほどしかない。 「ひゃ、小さ! こんな軽い碇、利くんやろか」 クチダケ鳥の疑問に、海風が応えた。 「魔
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