異様な光景だった。ドイツサッカーのセカンドディビジョン、ツヴァイテ・リーガ第7節ホルシュタイン・キール対ザンクトパウリ(9月19日)のキックオフを控え、両チームの選手たちがウォーミングアップに汗を流していると、突如として“黒ずくめの集団”がピッチに雪崩れ込む。 30人くらいだろうか。顔をマスクで覆い隠すなど、揃いも揃って銀行強盗のような出で立ちをした男たちは、セキュリティーの制止を振り切りながらフィールドを縦断。向かった先はザンクトパウリのサポーターが陣取るスタンドで、彼らが掲げていたフラッグやバナーを取り外そうとしている。いったい何が起きているのか。試合開始を心待ちにするファンが呆気にとられたのは言うまでもない。 両軍にとって敗北が許されないローカルダービーを前に、蛮行に及んだのはホルシュタイン・キールのウルトラスだった。試合日の4日前にあたる9月15日にサポーターズグループの1人がザン