今から四〇年以上前、あまりお金がない学生だった私は、無料でもらえる出版社の広報誌を読んで知識を得ていた。『図書』は神田神保町にあった岩波書籍の専門店「信山社」に行くともらえるので、ほとんど毎号欠かさず読んでいた。 そんなお世話になった広報誌に執筆できるなんて……、と喜んだものの、担当編集者氏から見本として渡された『図書』の最新号を見ると、実に高尚な文章ばかりが並んでいる。私、そんなこと書けない……。 念のため「ほんとうに、私なんかが書いていいのですか?」と確かめると、「『図書』の編集長がぜひ三橋さんに、とのことです」と編集者氏。よし、これで言質は取った。『図書』にあるまじき卑俗なことを書こう。 二〇一四年、バンコクで開催された国際学会に参加した私たち(女性研究者二人、Trans-woman=男性から女性へのトランスジェンダー三人)は、学会のプログラムが終わった夜、イスラム教徒の商人たちの街
![いろいろつながる話|三橋順子【『図書』2022年7月号より】|岩波書店のWEBマガジン「たねをまく」](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/7d310de14f4b3ee00dd20ded5af959e5f5be4b09/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Ftanemaki.iwanami.co.jp%2Fmedias%2FzaAc5%2Fimages%2Fogp%2Fpost_ogp_ID5942_20220704163301.png)