このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 上海大学の研究者らが発表した論文「Entangled biphoton generation in the myelin sheath」は、脳内の神経繊維が、量子もつれによって結びついた光子のペアを生成する可能性を理論的に示唆した研究報告である。実験によって裏付けられれば、この現象は、脳内の何百万もの細胞がどのようにして活動を同期させ、脳を機能させるのかを説明できる可能性がある。 脳が活動する際、何百万もの神経細胞が同時に発火(電気信号を発する動き)する。この現象には、多数の神経細胞の同期活動、つまり遠く離れた細胞同士でもタイミングを合わせる必要がある