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ぼくが6つのとき、よんだ本にすばらしい絵があった。『ぜんぶほんとのはなし』という名まえの、しぜんのままの森について書かれた本で、そこに、ボアという大きなヘビがケモノをまるのみしようとするところがえがかれていたんだ。だいたいこういう絵だった。 「ボアというヘビは、えものをかまずにまるのみします。そのあとはじっとおやすみして、6か月かけて、おなかのなかでとかします。」と本には書かれていた。 そこでぼくは、ジャングルではこんなこともおこるんじゃないか、とわくわくして、いろいろかんがえてみた。それから色えんぴつで、じぶんなりの絵をはじめてかいてやった。さくひんばんごう1。それはこんなかんじ。 ぼくはこのけっさくをおとなのひとに見せて、こわいでしょ、ときいてまわった。 でもみんな、「どうして、ぼうしがこわいの?」っていうんだ。 この絵は、ぼうしなんかじゃなかった。ボアがゾウをおなかのなかでとかしてい
「恋愛なんてのは基本的に勘違いだからさ」 彼女はそういう。 「例えばこの千円札、君は千円分の価値があると思っているでしょう?まあ大概の人はそう思っているよね。ただの紙切れなのにね。だけど、この幻想が共有されている限り、千円札は千円分の価値がある。共同幻想は実体を持って成り立つんだよ。勘違いっていうのはそういうこと。恋愛ってのは比較的新しい発明なんだよ。発見ではなくて発明。それ以前には恋愛は存在しなかった。友情はたぶんあっただろうけどね。でも、恋愛という発明は偉大だった。共同幻想として成立しうるほどにね。けれど、恋愛が幻想だってのはみんな無意識的に認識してるんじゃないかな。少なくとも貨幣制度が幻想の上に成り立っているというのと同じくらいのレベルでは。だから自分のだけは幻想じゃなくて本物だって確認したくなる。それって、罪深いことだよね。悪いことではないけれど。そう、悪いことじゃない。ただ、共有
まれに三角形や丸なんてのもいるが、ともかく彼は六角形であった。いや、この場合は六角柱と言ったほうが正しい。なぜならもちろん彼は鉛筆だからである。鉛筆がこの世に鉛筆として生を受け、鉛筆としての機能を初めて発揮した日のことは忘れがたき思い出、トラウマ、存在意義として彼の脳裏に焼きついていた。ぴかぴかに尖った先端を支えにしながらやわらかめの紙の上でおどると、自分の体の一部が紙にしゃりしゃりと音を立ててこびりつく。その行為は鉛筆に母親の胎内へ還っていくような錯覚をおぼえさせた。強い快感をともなう行為だった。涙と鼻水と汗が同時に出てきた。そのたびに紙やセロテープや定規たちは鉛筆を怪訝な目で見たが、しかし紙に何か書き付けるたびにそういった状態に陥るのは、なにも彼だけの話ではない。鉛筆はみんなそうなのだ。 ともあれ、強烈な快感を全身で感じながら鉛筆は一休みした。目のくらむような満足感に突き動かされ、鉛筆
ある朝、目が覚めると違う世界にいた。いや、違う世界だと言っても、見た目は昨日まで生きていた世界と何ら変わりがなかったので、最初はそうだと気づかなかった。では、何が違うのかと言うと、私以外の人間が全く違っていたのだ。と言っても、全員が裸で過ごす世界や、食事とセックスの概念が入れ替わった世界など、そんな嬉しいものでも、見た目でわかるものでもなかったから、最初は気づくことができなかったのだ。しかし、彼らと話してみると、いつものように話しているはずなのに、いつものようではない。もちろん、話す言語は以前と変わらず日本語であるのだけれど、言っていることがてんで理解できないのだ。よく理解できないことの例えに微分積分のようだと言うがその比ではない。むしろ私は数学は得意であったから微分積分は理解できないとは思えない。しかし、彼らが話す言語は、微分積分の例で言うと、大学院から研究者レベルの数式であった。彼らは
私を食べて下さい。それが彼女の最初で最後のわがままだった。 彼女が死んで3日後。準備は全て済んで後は待つだけとなった。1日目にはホームセンターにノコギリと寸胴鍋を買いに行った。2日目には彼女を風呂場で切断した。愛する彼女を切断するのは気が引けたけど、そのままでは食べることができないので切断した。そして3日目。バラバラに切断した彼女を寸胴鍋に入れて煮えるのを待っている。火で炙ろうかとも思ったのだけど、彼女は火葬が嫌だと言っていたのでやめた。ぐつぐつぐつぐつ。彼女が入った寸胴鍋をぼーっと見ている。ノコギリで切断したときも思ったことだけど、愛する彼女が肉片になっていくのはやはり悲しかった。それもノコギリで自分が彼女をバラバラに、肉片に、彼女を分解していく感触は堪らなかった。しかし、ぐつぐつと煮える鍋をぼーっと見ていた。涙も胃の内容物も、彼女が死んでから何も食べていなかったので胃液しかなかったが、
MAIL My追加 2013年08月14日(水) そんな僕がふとした拍子に彼女のことを思い出したのは、僕があの頃の彼女の年齢を超えた頃だった。 new 2013年08月12日(月) しかし、妻は弱々しく首を振る。「今のままがいいの。あなたと喧嘩なんかしたくないの。こうしていたいの」 2011年09月28日(水) 彼女はゆっくりと私の目を見て言った。「知りたい?」「ええ。知りたいわ」「教えてあげましょうか」 2011年09月27日(火) 「それだけのために、きみは生きてきたのかい?」「ええ。それだけのため、という何かがあるから私は生きてこられたのよ」 2010年07月11日(日) 辰夫を悲しませるようなことをした時だけ、辰夫のことを思い出すのだ。 2007年03月11日(日) 彼の美しい顔が少しずつ崩れているのが分かる。まるで、魚のような顔に。いやだいやだ。 2007年03月01
俺は今、きれいに包装されたチョコレートらしき物体を目の前にして悩んでいる。 ことの発端は、三ヶ月前に近所にできたコンビニにある。それまでは、帰宅途中にコンビニによるには、少し迂回するか、自宅からはだいぶ離れたところを使うしかなかった。それが、このコンビニができてからは、帰宅ルートを変えることなく、しかも自宅まで徒歩で1分ちょっとという、ちょっと便利すぎるくらいの状況になった。一人暮らしの俺が頻繁に利用するようになったのもわかってくれるだろう。 そのコンビニに新しいバイトくんが入ったのは、年が明けるか明けないかぐらい、つまり今から二ヶ月ほど前だったと思う。最初は、「かわいい子発見」くらいに思っていたのだけど、レジでの支払いのついでによくみてみると男か女か分からなくなってしまった。年のころは十七、八。たぶん高校生だろう。中性的な顔立ちで、かっこいいもかわいいもどちらも通用しそうな感じだし、背も
ある日私は気が違った。世界の方が変わったとのだと思いたいが、常識的に考えると、やはり私の気が違ったのだろう。しかし、本当にそうなのだろうか。私の気が違ったのではなく、皆の気がすでに違っていたのではないだろうか。私は今でもそのように思っている。 私の家にかわいい女の子がやってきた。名前はみい。照れ屋で少しはにかんだ笑顔がとてもかわいらしかった。彼女は人見知りをしたが、私には特別懐いてくれたので、私と彼女はよく遊んだ。場所はもっぱら近所の草原だった。なぜかうちにはハンバーガーがたくさんあった。父が何やらツテがあるらしく、私も大好きだったので、それをお昼ご飯に持って行き、ピクニック気分で毎日のようにでかけた。そこで私と彼女は二人で寝転がりながら、いろいろなことを話した。最近あったこと、そしてこれから先の将来のことを。私はかわいいお嫁さんになりたいな、と照れながら言った彼女の横顔が今でも忘れらない
申し上げます。申し上げます。旦那さま。あの人は、酷(ひど)い。酷い。はい。厭(いや)な奴です。悪い人です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ。 はい、はい。落ちついて申し上げます。あの人を、生かして置いてはなりません。世の中の仇(かたき)です。はい、何もかも、すっかり、全部、申し上げます。私は、あの人の居所(いどころ)を知っています。すぐに御案内申します。ずたずたに切りさいなんで、殺して下さい。あの人は、私の師です。主です。けれども私と同じ年です。三十四であります。私は、あの人よりたった二月(ふたつき)おそく生れただけなのです。たいした違いが無い筈だ。人と人との間に、そんなにひどい差別は無い筈だ。それなのに私はきょう迄(まで)あの人に、どれほど意地悪くこき使われて来たことか。どんなに嘲弄(ちょうろう)されて来たことか。ああ、もう、いやだ。堪えられるところ迄は、堪えて来たのだ。怒る時に怒ら
「朝は足が四本あって、昼になると二本の足となり、夜には三本足となるものとは何か?」 「答えは人間である。人間は幼年期には這って歩くので四本足で歩き、青年期には立ち上がって二本足で歩き、老いては杖をついて三本足で歩くからである。」 謎かけにはまだまだ先がある。 この生き物は深夜になると4本足になり、手足を無くして床を這うようになった後、さらには動くのを止めてしまう。手足は丸まって、そのうち口と肛門とが臍の周囲に集まってくる。 棘皮動物であるウミユリは、岩に固着して一生をおくる生きもの。「花」の中心に口があって、U 字型をした腸管を経由して、同じ面に排泄孔を持っている。 食べられなくなった老人には胃瘻が入って、床ずれがひどくなってしまった人には人工肛門や膀胱婁がついて、摂食と排泄の穴は、お互い臍の近くに集まってくる。 手足や顔は機能的な意味を失い、臍を中心として丸まって、花弁のように胴体を取り
「雪男くん、話ってなに?」 ボクのクラス一の美少女・蛆崎香織(うじさき・かおり)ちゃんが伝説の木の下にやってきたのは、約束の時間の十分後だった。 「話というのはほかでもないんだ」とボクはうつむきながらつぶやいた。香織ちゃんがまぶしすぎて、小心者のボクは目をあわせることなんかできやしない。 「実は、ボクとつきあっ」 「イヤ」 「即答かよ!!」 香織ちゃんは「チッ」と舌打ちしながら、もぞもぞとポケットを探った。そして年季の入ったジッポーとマイセンライトを取り出し、おもむろに煙草に火をつけた。 「雪男くんなら、あたしなんかよりもっといい娘がきっと見つかるわ。だから、ね?お互い、いいお友達のままでいましょうよ」 香織ちゃんはやさしくボクに微笑んだ。 「そんな!」ボクは詰め寄った。 「香織ちゃんはボクのこと、嫌いなの?」 「嫌いってわけじゃないのよ」と香織ちゃんは困った顔でまた
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