(2011年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 来るべき不況を楽しんでくれ――。国際決済銀行(BIS)は、米国など多額の債務を抱える国々にはっきりとそう言っているわけではない。しかし、同行がまとめた最新の年次報告書が暗示しているのは、そういうことだ。 筆者はかつて、ウィリアム・ホワイト氏が首席エコノミストを務めていた時期のBISが金融と財政の行き過ぎについて発した警告を高く評価したし、ホワイト氏の後を継いだスティーブン・チェケッティ氏も尊敬している。しかし、この報告書の主張には同意できない。世界中が一斉に緊縮策に走る際の障害を軽視しているからだ。 「抑制された恐慌」に陥った世界 確かに、緩和的な金融・財政政策を続けるのは居心地の悪いものである。しかし、異例な時期には異例な政策が必要だ。 現在はなぜ異例な時期だと言えるのか? それは、多くの国が調査会社ジェローム・レヴィ経済予測セン