2011年3月11日、日本列島に激震が走った。 東北地方の三陸沖を震源とするマグニチュード9.0もの巨大地震が起こり、宮城・福島・岩手県沿岸の町は、高さ10メートルを超える大津波に襲われた。もっとも被害の大きかった陸前高田などは、一瞬にしてひとつの町が丸ごと消えてしまった。 東日本大震災の死者・行方不明者は、およそ2万人。膨大な数の遺体が、津波で廃墟と化した町に散乱した。 だが、それだけ膨大な数の遺体が一体どうなったのか。 そのことを知る者は少ない。 本書『遺体 震災、津波の果てに』(新潮社)は、岩手県釜石市の「遺体安置所」をめぐる、震災発生後約3週間の出来事を描いたノンフィクションだ。著者の石井光太氏は震災直後から被災地を訪れ、2カ月半にも渡り、遺体安置所に通いつめる。その中で、遺体運搬を担当することになった市の職員、遺体の検案をする医師、消防団、葬儀社スタッフ、住職などに出会い、彼らが