中国の国有化学企業、中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスの農薬大手シンジェンタに提示した430億ドルの買収金額について最も注目されるのは、中国企業による海外企業買収計画で過去最大であることだ。中国化工が昨年、イタリアのタイヤメーカー、ピレリを買収した際の金額の5倍以上にのぼる規模だ。 だが、中国化工は大胆に海外進出する一方で、国内市場を強く意識しながら、そうしている。 肥料と農薬から多角化図る 中国化工はいわばタコのような組織で、化学品から石油精製、タイヤに至るまで幅広い事業部門を持つ。同社のアグリビジネス部門は、肥料と農薬の主要生産者だ。そしてこの2つは、中国政府が抑制したいと思っている環境に優しくない製品カテゴリーだ。 中国農業省は昨年12月、2020年までに肥料と農薬の消費の伸びを止めたいと発表した。「基本的に(肥料と農薬の)市場の伸びがゼロになるだろう」。台湾に本拠を構える調査会社