カート・ヴォネガットが死んだ。 ヴォネガットのホームページ を開くと、トップページにドアが開かれたままの鳥かごが大きく描かれている。中には1羽の鳥もいない。ヴォネガットは飛んでいったのだ。 彼の魂は今、何処に在るのだろう? 10代の終わり頃、ジョン・アーヴィングを通じて僕はカート・ヴォネガットの存在を知った。 18か19のときジョン・アーヴィングの『ガープの世界』を読み、すっかりアーヴィングの小説世界のとりこになった僕は、『ウォーターメソッド・マン』、『サイダーハウス・ルール』、『熊を放つ』など、当時日本語訳が出ていたアーヴィング作品を次々と読んでいった。 アーヴィングの物語はいつもとても長く(日本語訳のハードカバーはどれも必ず上下巻あった)、だからたっぷり時間をかけて読むことができた。大人は「時間を過ごす」ためにバーで酒を呑んだりするけれど、少年少女は本を読んだり、新宿の映画館で3本立て