東日本大震災の発生からまもなく1カ月が経つ。東京の主要メディアが発する情報の大半は東京電力の福島第1原発事故にシフトし、読者や視聴者の関心も被災地から遠のき始めている。だが、被災者の多くは依然として生活再建のめどすら立たない状況に直面している。ライフラインが復旧し始めた被災地から、次々に大手メディアの無神経な取材への怒りの声が寄せられている。今回はその一端を紹介する。●黒い水 昨秋、三陸を舞台にした小説を刊行した。執筆に先立ち、筆者は何度も三陸地方に足を運んだ。この間、現地にいる多くの人々にお世話になった。前々週あたりから、現地の声が届き始めた。互いに知人の安否確認を終えると、筆者が連載コラムを担当していることを知る向きの大半がこう切り出す。 「被災地での取材はむごかった」 特に、東京の民放、特定の情報番組の取材攻勢に怒りを隠さない向きが多い。「被災者はワイドショーの素材ではない」との声が