漢代を中心に、地方の豪族の墓などから当時のブタ小屋の明器が出土することがある。「猪圏」と呼ばれる柵に囲まれたブタ小屋である。 これら「猪圏」の明器には、柵に囲まれたブタ小屋の上階にトイレとなる小屋がついていることが多い。上階のトイレから垂らした便をブタが餌として処理してくれる、エコでロハスなトイレとブタ小屋の複合建築である。 ブタの代わりにヒツジを飼っているトイレもある。 博物館や美術館で中国関係の展示を見るとき、僕が最も期待するのはこの「猪圏」明器の有無だ。 中国では死後の世界は現実世界の延長として捉えられており、副葬される明器も現実世界で墓主が愛用していた品や生活必需品のミニチュアであることが多い。つまり実生活でもブタ小屋を併設したトイレを使用していたわけだ。 昔の中国のトイレがすべてがそうだったとは思わないが、僕らが親しんでいる『史記』や『三国志』の英雄豪傑美女たちも、みんなブタ小屋
