第 39 巻第1号 『立命館産業社会論集』 2003 年6月 109 リスク社会の存在論的不安と少年犯罪 ―佐賀バスジャック事件をもとにして― 近藤 理恵* 本稿では,2000 年に佐賀バスジャックを起こした少年の例をもとに,近年の少年犯罪の特徴が,リ スク社会において存在論的不安を抱え込んだ少年による犯罪にあることをA・ギデンズの存在論に依 拠しながら明らかにする。その上で,存在論的不安がP・ブルデューが指摘しているような社会的排 除のリスクとギデンズが指摘しているような親子関係における純粋関係のリスクや専門家システムの 拡大による経験の隔離のリスクによってもたらされていることを明らかにする。その際に,近代人の 病である存在論的不安が,消費社会の後に到来した 1990 年代以降のリスク社会において再びクローズ アップされる,古くて新しい問題であることに着目する。また,これら