すでに一部を紹介した秦郁彦、『昭和史の謎を追う』(上下、文春文庫)から、いくつか紹介。 まずは第17章「マレーシア虐殺報道の奇々怪々」。章題からは虐殺の存在に懐疑的であるかのような印象を受けるが、実際にはそのようなことはない(犠牲者数について諸説あることは指摘されているが)。それより興味深いのが、林博史によって発掘された第五師団歩兵第十一連隊第七中隊の陣中日誌が紹介されているところ。中国戦線で戦った部隊の戦闘詳報、陣中日誌にも捕虜の殺害や、敵性住民のうち子供と老人を除く男性を殺害したことについてはしばしば記載があるが、第一大隊からの命令による1942年3月、ネグリセンビラン州における「討伐」では、「鉄道線路及線路の両側500米以外の支那人及英国人は老若男女を問わず徹底的に掃蕩す」、と記載されているというのである(427頁、仮名遣いを改めた)。陣中日誌に記載されている以上、現場の暴走ではなく