「君たちは、初めての戦後生まれの高校生だ」 新学期が始まって初めて1年9組の教壇に立ったスドウは、このような言葉から授業をはじめようとした――君たちは、今年15歳。つまり、私たちのような年長の人からすれば、君たちと出会うことは初めてあの戦争を知らないこどもたちと出会うことになる。君たちがこうしてごく普通に高校生になれたのは当たり前のことでも、ごく普通のことでもない。それはひとつの歴史的な事実でもあるのだ。いや、君たちが高校生になったのは、ひとつの歴史的な事件なんだ。そうだ。歴史というのは、過去についての話だけには留まらない。歴史は今!この瞬間においても流れ続け、作られ続けている…つまり、君たちは歴史の最先端にいるんだ。 歴史家の多くがロマンティストであるというのは事実に等しい。スドウもまた同様であって、授業の最初の一言でこのように熱のこもった語りをおこなってしまったのも、その性格によるもの