【第1回】文芸翻訳での分詞構文や同格、言葉遊びの処理──Don DeLillo "MIDNIGHT IN DOSTOEVSKY"冒頭 英文を読むのと翻訳をするのにはかなり大きな違いがあって、読んでいるときの感覚を文章として可視化しないといけない点に翻訳のむずかしさがある。とりわけいつも困ってしまうのが、(初学者にはありがちな問題ではあるのだけど)「分詞構文や同格表現を複文で処理するか、それとも重文で処理するか」ということだ。その他にも「音を利用した表現」も厄介で、これはシンプルに言語の差異から不可避的に生じる問題なのでどうしても「解釈の問題」が絡んできてしまう。 最近読んだもののなかで、こうした問題について考えるうえで良い題材になると感じたのがドン・デリーロによる短編『ドストエフスキーの深夜(原題:MIDNIGHT IN DOSTOEVSKY)』だ。全文翻訳をここに公開するのは著作権的にア