<開発の背景と経緯> 中性子は、水素などの軽元素原子の位置や磁気の分布など、X線では得ることのできない物性を知るために利用されています。これまでの中性子ビームは、主に原子炉中性子源から供給されてきました。しかし、こうして得られる中性子ビームの強度は低く、詳細な物性を調べるには不十分でした。 2008年に世界最高性能の大強度陽子加速器中性子源であるJ-PARCが茨城県の東海村に完成しました。J-PARCの中性子ビームは従来の原子炉由来のものよりも、ピーク強度で100倍もの強度を持っています。この中性子ビームを高性能な集光ミラーで絞り、単位面積あたりの強度をさらに上げることによって、今までは全く知ることができなかった物性を調べることが可能になります。 中性子を集光するには、1)全反射ミラー注4)やスーパーミラーによる反射、2)物質界面での屈折、3)磁場のいずれかを利用する方法が挙げられます。こ