実践的・実務的な教育ばかりが重視されている昨今の日本社会。靖山画廊代表であり、『教養としての「芸術」入門』(幻冬舎MC)の著者の山田聖子氏は、日本人の芸術的教養が損なわれてしまうことを危惧している。 「教養がある」「教養がない」とはどういうことか そもそも「教養」とは何でしょうか。 実は、教養という言葉に決まった定義はありません。辞書や事典に書かれた解説もどこかあいまいで、微妙に意味合いが違っていますし、人によって解釈が異なります。 文部科学省の資料(『新しい時代における教養教育の在り方について〈答申〉』2002年)には、次のようにまとめられていました。 「教養とは、個人が社会とかかわり、経験を積み、体系的な知識や知恵を獲得する過程で身に付ける、ものの見方、考え方、価値観の総体ということができる。(中略)知的な側面のみならず、規範意識と倫理性、感性と美意識、主体的に行動する力、バランス感覚