『それでもボクはやってない』で痴漢冤罪問題に深く切り込んだ周防正行監督が、今回選んだのは、終末医療の現場で起こる生死をめぐる問題と、検事室という密室で起こる問題の2つをモチーフにした映画『終の信託』だ。 原作は、現役弁護士・朔立木(さく・たつき)の同名小説。主演は草刈民代と役所広司。1996年に公開され、日本アカデミー賞全部門を制覇した『Shall we ダンス?』以来、16年ぶりに2人が共演したことも話題を呼んでいる。 とはいえ、正直言って見やすい映画では決してない。上映時間は2時間24分と長尺だし、重いテーマの作品でもある。疲れているときに見たら、もっと疲れたなんてことになりかねない。にも関わらず、紹介したいと思った理由。それは、この映画が届けようとする重いテーマは、決して避けて通るべきものではないと思えたからだ。