ブログでまとまった文章を書くのがかなり億劫になってきて、気づけば今年初めての更新です。twitter脳の恐怖… ロシアの現代作家、ヴィクトル・ペレーヴィンの小説。 宇宙飛行士の体に、エジプトのラー神の頭がついている表紙がかわいい。 孤独な少年時代を過ごした主人公オモンがやがて宇宙飛行士となり、月への特攻飛行を目指すという物語。ノスタルジックで牧歌的な世界の中に、ソ連体制下のグロテスクでナンセンスなイメージがひょいひょい顔を覗かせ、不思議な魅力があります。例えるなら、子どもがダンボールを家や乗り物に見立てて遊ぶ「ごっこ遊び」のような魅力を物語から感じました。想像力は宇宙旅行よりも奇異な旅を授けるのだよ。帰省から東京に戻るバスの中でこれを読んだので、高層道路を走る夜のバスのちょっとうらびれたイメージとマッチしていてよかったです。 すごくおもしろかった! 語り手〈私〉が聞いた、フランス人老公爵ブ
1.パウルの誕生と青年時代 小生の父となるタコは老獪で恐れを知らず、母となるタコは優美で美しかった。 諸兄は、タコの交尾というものをご存知であろうか。なんでも脊椎世界には「くんずほぐれつ」という言葉があると聞くが、たった4本ぽっちの手足しか持たない脊椎動物からそのような言葉が生まれるということ、そこに小生はいささか哀しみのようなものを覚えずにはいられない。 小生の父にあたるタコと、母にあたるタコは海底で出逢うとすぐさま、8本、8本、計16本の足を絡め、ちょうちょう結び、いかり結び、あやとりの東京タワーなどを即興で作り上げながら、性の営みに情熱の限りをつくした。まさに「くんずほぐれつ」である。その記憶はいまも海に漂っており、ふとした海水の流れから当時の彼らの熱狂をうかがい知ることができる。 母にあたるタコが産卵し、小生の人生の出発点となったのは、原発の排水によってあたためられた海であった。
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