〇〇駅。快速列車の止まらない、□□□□から×××湖の方向に30分の駅だ。 ×××湖をレンタルサイクルで観光しようと予定していた私は、雨の予報に出鼻をくじかれ、仕方なく歩いて散策しここへたどり着いた。 〇〇駅の待合室で心地よいけだるさを感じる。 目をつむり椅子に掛けていると背後の窓から風が髪をなで、脇を通り抜けてゆく。 ふと、ここでは過去に現代が溶けて行っていると感じた。 交通ICに対応していない古びた待合室はふとすれば過去の一時を切り抜いたような感覚が起きる。 待合室には多言語のQRコードのついたポスターが申し訳程度に張られ、ここは現代だとささやかな主張をしている。 窓枠には「ご自由にどうぞ」と駅ノートなるものが立てかけられている。 5月に設置されたばかりのようだ。 過去に現代を吹き込む方法が過去然としているのがまた趣があり、情をくすぐられる。 民家の向こうの山の上から雲とも霧ともわからぬ