「この本を怒りの手記ではなく、『笑える手記』にしたいという明確な方針が見えてきたことで、ようやく 本屋大賞作家、DV容疑で逮捕――。そんな衝撃のニュースが駆け巡ったのは今からちょうど1年前のこと。 『天地明察』や『マルドゥック・スクランブル』など数々のヒット作で知られる人気作家・冲方丁(うぶかた・とう)氏だけに多くのファンを驚かせたが、これが当人の身に覚えがない事件であることは、今春まで『週刊プレイボーイ』本誌で連載していた手記『冲方丁のこち留(とめ)』につづられたとおり。 このほど、その手記が大幅な加筆修正を経て、より深く今回の事件に踏み込んだ書籍にまとめられた。あらためて著者である冲方氏の心中に迫る。 ―突然の逮捕、そして留置場生活をつづった『こち留』は大きな反響を呼びました。そもそもなぜ一連の事件を活字にしようと考えたのでしょう? 冲方 やはり一番の理由は、作家として「この体験はネタ