「悔しいというか…」。彼女は言葉を詰まらせ、涙が止まらなくなった。 将棋の女流棋士、里見香奈さん。26歳。若き女流棋界の第一人者が泣く姿など思いもよらず、うろたえた。 福岡県飯塚市で5月30日に行われた女流王位戦5番勝負の第3局。4連覇を目指す里見さんは挑戦者の渡部愛(わたなべまな)さん(24)に敗れて1勝2敗となり、かど番に追い込まれた。 その日の夜。関係者だけの慰労の夕食会後、少しだけインタビューの時間をもらった。普段通りにこやかに答えていた表情が曇ったのは、次の質問に移った時だった。 「奨励会退会が決まった時は、さぞかしつらかったでしょうね」 同じプロでも「女流棋士」と「棋士」は資格も待遇も異なる。里見さんは19歳の時、女流タイトルを持ちながら、史上初の女性の「棋士」を目指して棋士養成機関の奨励会に編入した。それから約7年。プロ入り(四段昇段)一歩手前の三段リーグで戦ったが今年3月、