「えー、ただいま、前の電車が鹿と接触したため大幅な遅延が発生しております。お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしますが、しばらくお待ちください」 『夏へのトンネル、さよならの出口』の物語はそんな「よくあるアナウンス」から始まる。 青春映画は「ボーイ・ミーツ・ガール」で始まるとよく言うが、本作の場合は「トレイン・ミーツ・ディア」というわけだ。 映画『夏へのトンネル、さよならの出口』は、2019年にガガガ文庫から発売された八目迷著の同名の小説を映画化した作品である。 監督・脚本を担当したのは、2022年秋より放送がスタートする『BLEACH 千年血戦篇』でも監督を務めることで知られる田口智久監督だ。また、アニメーション制作を『映画大好きポンポさん』で注目を集めたCLAPが担当しており、美麗な背景描写やCG処理へのこだわりは本作でも健在であった。 では、作品の内容の方に話題を移していこう。 小説原作