最近の雇用問題や天下りをめぐる議論をみていると、「派遣切りはかわいそうだ」とか「天下りはけしからん」といった事後の正義によって政策が決まる危険を感じる。こうした問題の根本的原因は、日本企業の成功を支えた長期的関係(会員権)に依存した評判メカニズムがうまく機能しなくなったことだ、というのが拙著の主張である。これは私のオリジナルではなく、Krepsによって理論的に明らかにされ、Greifが歴史的に実証したもので、ゲーム理論業界ではおなじみの古い話だ。個別に説明するのは面倒なので、厳密な論証は拙著の第5章を読んでいただくとして、ここでは霞ヶ関の人々が公務員制度を考える際の参考になりそうな部分(pp.90-94)を、少し長くなるが丸ごと引用しておく:いわゆる日本的雇用慣行の特徴をなすのは,終身雇用,年功賃金,企業別労働組合の3 要素であるといわれる.これらは個別に見ると必ずしも日本に固有ではなく,