施薬事業および薬師信仰に着目して、江戸時代の公儀による支配を論じた文献を読みました。平易な文章でありながらも、政治と宗教との関連についてスリリングな洞察を導いており、非常に刺激的な文献でした。修論用メモ。 岩下哲典『権力者と江戸のくすり――人参・葡萄酒・御側の御薬』北樹出版、1998年。 権力者と江戸のくすり―人参・葡萄酒・御側の御薬 作者: 岩下哲典出版社/メーカー: 北樹出版発売日: 1998/04メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログを見る 江戸時代の公権力は、薬を通じて諸大名および領民の統治をおこなっていた。たとえば、幕府が諸大名の支配を強めるために薬用人参を分け与えるという支配もあれば、そういった公儀が領民に施薬をおこなうことで支配が試みられたのである。しかし著者は、薬がひとびとの身体に作用しただけでなく、精神レベルにも影響を与えていたことに注目する。つまり、薬