「ワスはマトモ星から来たマトモ星人と言う者なんだケド……。今日なんでこんなところにワスがいるかって言うと、ワスの星と西荻星との間に戦争が起きたからなんだよね……。ワスは、ほら戦争なんか参加できないじゃんかー、だからこうして地球まで逃げてきたわけですよ……」
http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20090425/p1 http://d.hatena.ne.jp/Geheimagent/20090506/p3 「ラジオでも聴くかい?」 スジコの家まで後数分というところで、彼は助手席に座り、俯いたままでいる女に声をかける。返事はなかった。それでもスジコはあたかも、前に訊ねた言葉など無かったかのように、自分がラジオを聴きたかったからそうしたのだ、とでも言うように、FMのスイッチをオンにした。本当は車内に立ち込めた緊張した雰囲気に、奮い立っていたテンションを削がれてしまうことを恐れてのことだった。FMの周波数を示す液晶ディスプレイが受信できる電波を探して、高速で動くのをスジコは視界の隅のほうで確認していた。この沈黙をかき消してくれるなら、なんでも良い、はやく音を、音を。そう願いながら。ディスプレイの数字が止って、チューナ
第8回文学フリマが終了しました。何度もしつこく宣伝しましたとおり、私は、はてなダイアラーによる文芸同人サークル「UMA-SHIKA」の主宰としてイベントに参加し、ブースで『ウォッチメン』の話をしたり、会場近くのおすし屋さんで穴子丼を食べてお店の大将と楽しい会話をしたりしました。その甲斐あってか、販売実績は95冊。初参加かつ、一冊1000円という少しお高めの値段設定にも関わらず、100部用意した創刊号はほぼ完売となりました。お買い上げいただいた皆様、本当にありがとうございました。 実は、楽しい打ち上げも終えて帰宅する途中、急に肩の力が抜けたようになって、その瞬間に「果たして、今回作った本を本当に売って良かったのだろうか……。個々の作品は素晴らしいと思ったけれど、それって作り手側の自己満足に過ぎなかったんじゃないだろうか……」と悶々とした不安に襲われてしまいました。こういった創作活動は本当に、
『酔い』(上) 藤沢駅北口のミスター・ドーナッツでスジコはアメリカン・コーヒーとフレンチ・クルーラー、それからオールド・ファッションを注文し、窓際の席に座って読みかけの本のページを開いた。交通量の多い道路に面しているせいか、いつも薄く汚れている窓ガラスから土曜の午前中の陽射しが零れ、数分もすればそれがスジコの左半身を徐々に温めていく。こうして日光を浴びていると、前日記憶を失うまで飲んだアルコールの残滓が体内から消えていくような気がするのだ。パーカーのフード越しに感じる陽の光が、懐かしい人の温もりのようにも感じられるなかで、スジコはアメリカン・コーヒーを何杯もおかわりし、ページをめくっていった。ドストエフスキーの『悪霊』のカバーをかけた江國香織の小説のページを――スジコは、江國香織などの若い女性に人気がある作品に触れることによって、女性の気持ちが分かり、なにかの拍子で女性と仲良くなれるのでは
実家でテレビを観ていたら、NHKの『新日曜美術館』の司会が姜尚中だったので驚いた。近年専門の政治学とはほとんど関係ない(としか思えない)ところで大ブレイクを果たし、紅白の審査員をつとめるなど姜先生の活躍の広がりには「やーねー!」のシュプレッヒコールを浴びせかけたい気分になるが、司会席に座る氏のなんだか不本意そうな仕事ぶりには苦笑を禁じえないものである。しかし、ファンとして素直に考えてみれば、あの美声が毎週テレビで聞けることは喜ぶべき事態なのかもしれない。 姜尚中先生、亀山郁夫先生でインテリ高級ホスト3羽ガラス!(あと1羽未定)*1 さて、この発言である。今終わろうとしているゴールデン・ウィークのしめくくりに、ここで未定となっている「一羽」に相応しい知識人を審議する、という試みもまた一興であろう。まず、ayakomiyamotoさんが選ぶ、現在のラインナップを確認しておこう。 (写真左から、
LotusFlow3rposted with amazlet at 09.04.27Prince NPG (2009-04-07) 売り上げランキング: 29 Amazon.co.jp で詳細を見る プリンスの新譜。00年代後半に入ってからほぼ毎年猛烈にクオリティが高いアルバムを発表している殿下であるが、今回は3枚組(うち1枚はプリンスがプロデュースしたBria Valenteという女性アーティストのアルバム)というキチガイ染みたボリューム。この枚数だと「アウトテイク集なんじゃねーの?」と不安になったが、それはまったくの杞憂で前作『Planet Earth』以上にギター弾きまくりで、異様にブルース色、ジャズ・ファンク色が濃い一方で、バラード曲もすごく良い曲が揃っている1枚目、時代錯誤感溢れるディスコ・チューンがある意味で時代の先を行き過ぎている2枚目、という激アツなアルバムなのだった。ジャ
雨がコンクリートを打つような音でハッとなり、スジコスミオは意識を取り戻す。雨だと思われたのはシャワーから出る水が風呂場の床に吐き出される音で、スジコスミオは自宅の風呂場の椅子に座り、自分がTシャツを着たままシャワーを浴びていることに気がついた。だがなぜか下半身には何も身につけていない――スジコの自由の状態になった下半身にある、異性と契りを交わすための器官は硬く、強く奮い立っていた。まず、スジコはその奮い立つ様子に驚いた。なぜなら彼の股間に備わった、今では肉の串のようになっているそのシロモノは、ここ一年半ほどのあいだずっと“眠った”ままの状態で、小用を足す以外の用途に使えない柔らかな肉の塊に過ぎなかったからだ。ある身体器官としては不全であるとしかいえないその状態に陥った原因をスジコは精神的な理由だ、と人に説明していたが、説明の聞き手からすれば明らかに酒の飲みすぎだった――スジコよりも一回り年
すべては消えゆく (白水uブックス―海外小説の誘惑)posted with amazlet at 09.04.23アンドレ・ピエール ド・マンディアルグ 白水社 売り上げランキング: 303875 Amazon.co.jp で詳細を見る (ブログに記録しているところによれば)およそ一ヶ月半ぶりに小説を読む。しばらく小説に遠ざかっていたのは「小説ばかり読んでいるとバカになる」と思っているからなのだが、久しぶりに読んだら「やっぱり、小説って面白いよなぁ……バカで良いよ、もう……」などと思ってしまう。それは一重にマンディアルグの筆力によるものであろうが。そう、マンディアルグである。フランスの幻想小説の大家の最後の長編を読んだのだ。これは、三島とダンテとジョイスをごちゃまぜにして、それをものすごく込み入っていながらも美しい文章で書き下ろし、かつ、官能小説すれすれのエロティックな描写を挿入したという
『UMA-SHIKA』創刊号の印刷用データを本日入稿いたしました。連日連夜の作業によって目の下にくすみが発生し、死人ライクな顔つきになってしまいましたが今回の成果物には自信があります。レイアウトは『ユリイカ』を舐めるように読み、思いっきりパクりました。WORDで強引に編集したとは思えない(このワープロソフトの機能を使い倒した)仕上がりに、皆様満足していただけるはずです。最終的に当初予定していた80ページの分量は、140ページまで膨れ上がりました。掲載作品は下記になります。 《小説》存在しない三つの故郷についてのメモワール(id:Geheimagent) 《小説》デストルクティオン(id:Dirk_Diggler) 《小説》あっちゃんの東京暴動(id:yoghurt) 《小説》マリンパレス(id:acidtank) 《まんが》かえってきた小鳥 おそろいのポシェット(id:ayakomiyam
マージナル (1) (小学館文庫)posted with amazlet at 09.04.15萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 137726 Amazon.co.jp で詳細を見る マージナル (2) (小学館文庫)posted with amazlet at 09.04.15萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 119988 Amazon.co.jp で詳細を見る マージナル (3) (小学館文庫)posted with amazlet at 09.04.15萩尾 望都 小学館 売り上げランキング: 119151 Amazon.co.jp で詳細を見る しつこく萩尾望都強化週間なのだ(でも今度ので一旦終了)。この『マージナル』は冒頭からいきなり性的な同性間セックスの描写(しかも男娼宿)から始まって、かなりド肝を抜かれたけれども*1とても興味深く読む。この『マージナル』という
指揮:下野竜也 男声合唱=東京混声合唱団 芥川也寸志(没後20年):エローラ交響曲 藤倉大:読売日響委嘱作品《アトム》【世界初演】 黛敏郎(生誕80年):《涅槃交響曲》 マエストロ下野の読響定期を初めて聴きに行く。超絶良い演奏会。帰りに下野さんと偶然お会いして「素晴らしい演奏会でした!」と伝えると、アルコール混じりの笑顔で握手していただけた(柔らかい手……)のも感慨深いのだが、収穫が多い演奏会で「こういうのがオーケストラを生で聴く醍醐味だよな」と思った。ここで今日の演奏会をプログラム順に振り返ってみよう。 まず前プロの芥川也寸志だが、これは私がこれまで抱いていた芥川のイメージが覆されるような演奏だった。私はこの作曲家のことを、変拍子の印象的なリフレインを多用し(いわばカンザスシティのリフ・ミュージックのような)、ハーモニックな感性には欠ける粗野な作曲家、とばかり思っていたのが、冒頭の弱音だ
標記の通り、私主宰による文芸同人「UMA-SHIKA」の同人誌『UMA-SHIKA』創刊号を現在編集中です(20日前後に入稿予定)。すでに各同人からの原稿が続々と私のところに寄せられており、それを読みながらレイアウトを組んだり、半角入力の文字を全角に直したり、明らかな誤字を訂正しているのですが、本当に素晴らしい作品ばかりで何度も絶頂に達しそうになりました。寸暇をこのように過ごせることを大変幸福に思います。 ちなみに現時点で128ページ。皆様のお手元にこの同人誌が届いたときには、最低でも1日ぐらいは楽しい時間が過ごせるのではないか、という出来とヴォリュームだと思っています(まだ増えます)。 表紙の仮データも送られてまいりました(id:yoneyacco様、ありがとう!ノーギャラなのに最高です!!)。当初参加予定だった方の名前がなかったりするけれども、その代わりにシークレット・ゲストが参加予定
id:ono-winさんから「次回、ウチのバンドが主催するイベント(たぶんフジロック)に出演してください!」と熱烈なコンピューター・ラヴ・コールをいただいていることでクアラ・ルンプール界隈を根城にしている占い師の間では目下の噂となっているニップル騎士団*1ですが、今夜、次回のライヴ、そうつまり、少なくとも朝霧ジャム以上ライト島ロックフェスティヴァル未満のフェスティヴァルになることが予想されるイベントが9月22日になりそうだ、ということを先方より連絡いただいたのでひとり盛り上がり、500ミリリットルの一番絞りと水割りを3杯飲んで作ったのがこの曲です。曲を作る直前には以下の映像を観ました。 以上は直近のZAZEN BOYZのライヴ映像ですが、他の映像もあわせてみてみるとこのバンドがまた音楽性を変化させ、今度はさらにアフリカンかつニューウェーヴな方向性を模索しているのではないのか、と思いました。
ツイッターのほうで神奈川の黒いモリッシーこと、id:acidtankが「アルジェント最高!ゴブリン最高!」的な発言をしていたのを思い出して、ゴブリンみたいな曲を作って新しいニップル騎士団のテーマにしよう!!と思いついたことからできたのがこの曲です。あくまで私の中のうろ覚えのゴブリンなので、現実のゴブリンとは乖離している可能性が多々あります。 確認してみたらやっぱり全然違った。
人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)posted with amazlet at 09.03.26フランセス アッシュクロフト 河出書房新社 売り上げランキング: 91886 Amazon.co.jp で詳細を見る 原題は「Life At The Extremes」。タイトルだけからすると、ナパーム・デスとかライトニング・ボルトとかそういうエクストリームな人たちを愛好する人々の人生を追った本かと思いがちだが*1、実際のところはイギリスのオックスフォード大学で生理学を教えている科学者が書いた「人間は極限状態にどこまで耐えられるのか」を詳細に示した本である。全7章の内訳は以下の通り。 どのくらい高く登れるのか どのくらい深く潜れるのか どのくらいの暑さに耐えられるのか どのくらいの寒さに耐えられるのか どのくらい速く走れるのか 宇宙では生きていけるのか 生命はどこまで耐えられるのか この
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