再検討から新たな提言へ。「教育改革」の行方を考える緊急書き下ろし。 「はじめに」より 鳥飼玖美子 本書を書こうと考えた動機は、相次ぐ英語教育改革である。私が大学で英語教育に携わるようになった平成元(1989)年頃から英語教育改革が言われ、2000年代に入ってますます「抜本的改革」の頻度が多くなってきた感がある。その度に学校現場が右往左往している状況を見て、このような状態は「慢性的改革病」か「抜本的改革症候群」とでもいうべき病ではないかと思い始めた。特に不可解だと思われたのは、以前の「英語教育改革」の総括や検証などが行われた様子もないまま、「抜本的改革」案が打ち出されることである。しかも、その都度、改革が必要な理由として言われるのが「読み書き文法しか教えない学校英語」への批判であるのは、理不尽を通り越して笑止千万でさえあると思った。日本の学校英語教育が公的に、コミュニケーションに使える英語を