日本人に食されてきた海苔には「贈りもの」としての歴史が連綿とある。海苔の進物品としての変遷を前篇では見てきた。 海苔は今もお歳暮に選ばれている。軽くて、しかも日持ちがよいという理由もあるのだろう。だが、そうした特徴が生かされるのも「誰もが美味しいと受け入れる風味である」という特徴があってこそだ。 海苔を食べる習慣が古くからあるのは、日本や韓国など東アジアの一部の地域のみ。世界的には稀有なこの食材を科学的に捉えて見ると、その風味と日本人の味覚の分かち難い関係性が見えてくる。 後篇では引き続き、東京・日本橋に本店を構える海苔の専門店「山本海苔店」に話をうかがう。海苔のプロが“海苔の美味”をどのように追求しているのか、その舞台裏を聞いてみたい。 11月から12月にかけては、海苔の「初摘み」の時期だ。 まず、海苔の“タネ”を牡蠣殻の中で培養しておく。そして秋、このタネが付いた「海苔網」を海に張って