ブックマーク / honz.jp (761)

  • 『人類の意識を変えた20世紀 アインシュタインからスーパーマリオ、ポストモダンまで』 - HONZ

    世界のヘソが消えた 歴史が未来を映し出す鏡であるなら、20世紀は私たちに何を見せてくれるだろう? 書はとくに人類の意識・精神が、この激動の世紀にどのように変容したのかを描き出す。 かつてない破壊と解放をもたらした20世紀ーー科学・アート・文化などを横断しつつ、知られざる歴史の分岐や小径も見逃さない旅。ロックミュージックやビデオゲームSFや魔術思想などが、経済や政治の大きな転機とともに浮かび上がるだろう。 さて、20世紀初頭の大変動から、旅は始まる。当時、世界には秩序・体系のヘソ(軸)となる「オンパロス」の権威が残っていた。たとえば19世紀末、アナーキストのブルダンが世界の標準時を定めるグリニッジ王立天文台の爆破を試みたように。 ところが、科学ではアインシュタインが「相対性理論」を発表し、ニュートンによる絶対的な時空間の支配をひっくり返す。時空は観測者の運動状態などによって伸び縮みする相

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    HONZ 2019/09/05
  • 『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』 不都合な真実から目を背ける人たち - HONZ

    具体的な数字やデータを示してもダメ。明晰な論理で説いてもムダ。そんなとき、あなたはきっとこう思ってしまうのではないか。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」。 実際問題、日々の生活でそんな思いを抱いてしまう場面は少なくないだろう。失敗例がすでにいくつもあるのに、それでもまだ無理筋を通そうとする社内のプレゼンター。子育てのあり方をめぐって、何を言っても聞く耳を持ってくれないパートナーなど。また不思議なことに、たとえ高学歴の人であっても、「事実に説得されない」という点ではどうやらほかの人と変わらないようだ。 さて書は、冒頭の問いを切り口としながら、人が他人に対して及ぼす「影響力」について考えようとするものである。心理学と神経科学の知見を織り交ぜつつ、著者は早々に厳しい診断を下す。 多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていた…。 数字や統

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    HONZ 2019/09/02
  • 『クロード・シャノン 情報時代を発明した男 』情報時代の本質とその未来を考えるために - HONZ

    私が中学生だった頃、数学の先生が1と0だけで数を表現する二進法を教えてくれた。この1と0を電流が流れている状態、または切れた状態に対応させると、全ての数を電流のオンオフ組み合わせで表せるという。これを利用したのがコンピュータだと聞いて、私はいたく感動した。 その考え方を世界で初めて提示したのが、書の主人公シャノンである。現代社会に不可欠のパソコン、携帯電話、DVDの全てが、彼なしにはありえなかった。 二進法の最小単位はビットと呼ばれ、文字や画像などの情報はビットの組み合わせで表現できる。情報量の単位としてビットを初めて導入したのがシャノンで、現代のデジタルコンピューターはビットを8個集めた8桁分の巨大情報をバイトという単位で扱う。 書は「情報理論の父」と呼ばれる天才数学者の評伝で、著者はハフィントン・ポスト元編集長などを務めた名うてのジャーナリストである。シャノン以前にも情報という概念

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    HONZ 2019/08/28
  • 『恐竜の世界史──負け犬が覇者となり、絶滅するまで』 失われた世界の新たな歴史 - HONZ

    そこに描かれている恐竜の姿に圧倒されつつ、胸をワクワクさせてページを繰った子どもの頃。そのワクワク感を思い起こさせてくれるような快著である。 2010年代に描かれる恐竜は、かつてわたしたちが見聞きした恐竜とはまるで異なっている。というのも、恐竜にまつわる研究がこの20年ほどで著しく進展し、恐竜のイメージが大きく書き換えられたからだ。驚くなかれ、たとえば新種の恐竜は、平均して週に一度のペースで発見されているのだという。書は、そうした研究の進展を背景にして、気鋭の若手研究者が新たな視点から「恐竜の世界史」を再現しようとしたものである。 よく知られているように、恐竜は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀といった地質年代を生きていた。だがじつは、従来のイメージとは異なり、恐竜はすぐさま生物界の覇者にのしあがったわけではない。三畳紀(とくにそのうちの2億3000万年前~2億100万年前)の恐竜は、それほど大型

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    HONZ 2019/08/12
  • 吉森教授の そろそろ『仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう』の話をしよう - HONZ

    『仲野教授のそろそろ大阪の話をしよう』は、仲野徹が身の回り5m以内の近さの人と大阪について語り尽くした一冊です。そんな訳でレビューについても、仲野徹の5m以内の人を探してみました。すると、さすがは大阪大学。オートファジーの世界的な研究者でありながら変人でもあられる、吉森 保教授の投稿が見つかりましたので、早速公開させていただきます。人曰く「仲野先生には内緒で」とのことですので、どうぞご内密にお願いいたします。(HONZ編集部) 最近、著名な作家の方と知り合う機会が増え、昔 の虫だった身としては嬉しい限りである。そういった方々の中で最も旧知の先生から、最近の著書を恵贈頂いた(その作家先生は、経緯は不明だが、どういう訳か私の勤務先の建物にいらっしゃる)。 頂いたにはサインとメッセージが付いていて(強面な風貌と対極にある可愛い丸文字!)、ありがたいことである。しかし私も科学者のはしくれ、こ

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    HONZ 2019/08/09
  • 『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』2019年のNo1新書 - HONZ

    書が2019年ベスト新書になると思う。第二次世界大戦は複数の戦争の集合体だった。日米の太平洋戦争はいうまでもなく、おおまかに分けるとドイツのヨーロッパ侵攻戦争、イタリアからはじまる北アフリカ戦争、そして書のドイツ・ソ連戦争だ。 書によればこの戦争でのソ連の死亡者(軍人+市民)は2700万人。ドイツは独ソ戦以外の戦争も含めて最大800万人。日は最大310万人だったという。 これまでにもイアン・カーショーの『ヒトラー』やアントニー・ヴィーヴァーの各著作などの文献や、NETFLIXNHKBSのドキュメンタリ映像を見てきたのだが、このほど独ソ戦についてコンパクトにまとめられているはない。戦史だけでなく、第3章の「絶滅戦争」では独裁者と権限が分散したナチス官僚機構、ヒトラーに対する国民の支持の源泉などについて極めてコンパクトに解説されている。 ちなみにそのことを含めてヒトラーとナチスが

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    HONZ 2019/08/02
  • 『今日われ生きてあり 知覧特別攻撃隊員たちの軌跡』 - HONZ

    思い切って告白するのだが、私はこのを泣きながら読んだ。はじめてこのを読んだとき、書斎で嗚咽した。号泣しそうだったが家族をおどろかせるのをはばかって声を殺して泣いた。なみだが幾度も流れた。 8年後、この文庫の解説をひきうけて、再読した。たまたま九州の都井岬へ行く用があったので、バッグのなかに『今日われ生きてあり』を入れて出かけた。東京から小倉、宮崎を経て串間までの片道13時間の列車のなかで読むつもりだった。 読めなかった。新幹線で読みはじめたのだが、なみだがあふれ、まわりを気にしてを閉じた。 都井岬のホテルで真夜中、目があいた。海に大きな月が上っていた。月に照らされた海を見下ろす窓辺の椅子で、あらためて読みはじめた。 一話ごとに(第十八話「〝特攻〟案内人」だけを例外として)泣いた。深夜のホテルの一室だから遠慮はいらなかった。ときには声をあげた。夜の海に向かって、おうおう吠えた。一話読み

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    HONZ 2019/07/30
  • 『少年ゲリラ兵の告白 ​陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』 - HONZ

    母は沖縄戦の体験者だった。このことが、ある意味ライフワークのように僕が沖縄にこだわる理由になったのだが、実のところ、母がその沖縄戦でどのような体験をしたのか、よくわからないままでいる。 沖縄戦について問うと、母は口を固く閉ざしてしまうからである。住人の4人に1人が亡くなった史上類例のない地上戦が展開された島には、その戦について語らない人たちが多い。「語らない」あるいは「語れない」理由はいうまでもない。戦がまだ夢に現れるほど可視的な過去であるために、心の傷が癒えないからである。 もう少し母の話を続けたい。米軍が沖縄島読谷村に上陸したのは1945年4月1日。来ならその年、彼女は沖縄県立第一高等女学校に入学する予定だったが、戦時教育措置によってすでに授業は停止され、上級生たちはほぼ1週間前の3月23日、南風原陸軍病院に看護要員として動員されていた。 いわゆる「ひめゆり学徒隊」である。学徒隊の

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    HONZ 2019/07/29
  • 『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』獰猛な集団がもくろむ「人間の嗜好」の数式化 - HONZ

    どんなに有名な大企業であっても、始まりはちっぽけなスタートアップにすぎない。今や世界中の人に知られる存在となったNETFLIXであっても、それは同様だった。 書は世界を熱狂させる数々のエンターテインメント作品を手がけてきた同社における、創業当時の物語である。まだストリーミング配信というものが主流ではなく、宅配DVDレンタル業を営んでいた時代が舞台だ。 彼らはDVDと倉庫とソフトウェアを組み合わせ、いかにして世界を席巻していったのか? それを元ロイター通信記者の筆者が、余すところなく記している。 スタートアップものといえば、大学を舞台にしたギーク(オタク)の成長物語を想像する人も多いかもしれないが、NETFLIXはひと味違う。彼らは初期のステージからある程度成熟しており、その組織の内側は強者のマインドに満ちていた。 それもそのはず。共同創業者のヘイスティングスとランドルフ。この2人は、すで

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    HONZ 2019/07/27
  • 『ハイエンドトラベル』 発想と創造を生む新しい旅の形 - HONZ

    コンサルティング会社キャップジェミニの「World Wealth Report」によると、投資資産を100万ドル以上保有する世界の個人富裕層の資産総額は、7年連続で増加して2017年に70兆ドルを上回った。 国際NGOオックスファムは、2016年の報告書「1%のための経済」で、2015年に世界の上位1%の富裕層が保有する資産が残りの99%の人々の資産を上回り、上位62人の富豪の資産が世界の下位36億人分と同じになったことを明らかにした。2010年には上位388人だったのが、この5年間で急速に集中が進んだことになる。 日銀統計によると、日の個人金融資産は2017年には1,800兆円(名目GDP550兆円)を超えたが、絶対額がより大きい9,000兆円(同2,100兆円)のアメリカ、3,100兆円(同1,400兆円)のユーロ圏においては、日より遥かに速いスピードで富の蓄積が進んでいる。 初っ

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    HONZ 2019/07/15
  • 「箱根本箱」へ、ブラHONZしてきました - HONZ

    はーい、こんにちは。ブラHONZ、はじめます~。 メンバーが“ブラブラ”と世界を巡りながら、知られざる歴史や成り立ちに迫る「ブラHONZ」。迫る前に泥酔してしまうかもしれませんが、誰もやらないので、深い意味も展望もなくスタートしちゃうことにしました。今回は、地形もバラエティに富む箱根へ。なんとがたくさん詰まったホテルが箱根にできたというのです。 さて、それを聞いたのは、メンバーのフルハタミズホからでした。 その名も「ブックホテル箱根箱」。取次会社の日販の保養所を改装し、「自遊人」が運営してオープンさせた、の森に眠ることができ、温泉にも入れる宿泊施設です。2018年8月1日にオープン、私たちが出かけたのは11ヶ月が過ぎようという2019年夏はじめ。フルハタによれば「夕のイタリアンが超絶美味い」とのことで、もうそうなると、天国と呼んでいいのではないでしょうか。 これは行ってみねば

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    HONZ 2019/07/14
  • 『真実の終わり』米国きっての書評家が警告する民主主義の危機 - HONZ

    ミチコ・カクタニをご存じだろうか。を愛する者にとって彼女はまさに「雲の上の人」だ。1955年生まれの日系米国人2世で、ニューヨーク・タイムズ紙で34年間にわたり書評を担当した。辛口の書評で知られ、98年にはピューリッツァー賞(批評部門)も受賞している。英語圏で最も影響力のある書評家だ。 書は、彼女が2017年に会社を退職して初めて世に問うた著作である。意外なことにそれは文芸批評ではなかった。トランプ政権の誕生以後、民主主義が危機に瀕する米国社会を鋭く分析した渾身の一冊だったのだ。 トランプ大統領の登場をきっかけに世界は明らかに変わった。フェイクニュースやプロパガンダがはびこり、真実を追究する姿勢はないがしろにされるようになった。ヘイトスピーチが主流化し、人々は異なる政治的立場を超えて対話する術を見失ってしまった。なぜこのような事態が引き起こされたのか。なぜ真実や理性は絶滅危惧種となって

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    HONZ 2019/07/13
  • 『アインシュタインの旅行日記: 日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者の日記にある日本の"今"と"昔" - HONZ

    1922年(大正11年)11月17日アインシュタインは神戸港に到着した。この日は京都の都ホテルに宿泊。日記には「下の町はまるで光の海。強烈な印象」「日人は簡素で上品、とても好ましい」と綴っている。 アインシュタインが特殊相対性理論と光量子仮説を発表したのは1905年。26歳のときだった。自身のノーベル物理学賞受賞を知ったのは日への船上だった。さぞかし楽しい旅になったことであろう。 そのためか、到着翌日の日記には「すばらしい由緒ある日建築(中略)。通りにはとてもかわいらしい生徒たち」「村々は好ましい清潔」「土地は念入りに耕作されている」と好印象なのだが、それに続けて「ジャーナリストたちが列車内に。いつもどおりばかげた質問」と書いている。日の美しい風景などの古き良き伝統は失われつつあるのかもしれないが、愚かなジャーナリスズムは現代のワイドショーにいたるまで、連綿と続いているようだ。 1

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    HONZ 2019/07/07
  • 『人生で大切なことは泥酔に学んだ』悲しいかな、酒を呑んでしくじったところで人生は終わらない - HONZ

    タイトルにつられてクリックしたあなたは、きっと経験があるはずだ。気持ち悪くて起きられない。前の晩に二軒目、三軒目に行かなければ、いや、最後の一杯が余計だったか。そんなことを今更、寝床で悔いても問題は解決しない。 会社員は何もしなくても、会社にいることが重要と人生の諸先輩方が教えてくれたように、雨が降ろうが雪が降ろうが、はたまた槍が降ろうが会社を目指さなければならない。果たして、匍匐前進のように腹ばいでトイレにようやくたどりついた人間が、どのようにして会社に行けるのかはいつも謎なのだが。 そういうときは絶望的な気分になる。ああ、もうダメだ、今日は行けないかも、人間として終わっている。ところが、人間は自分の経験では学習しない。決死の覚悟で会社に出向き、脂汗をかきながら耐えていると昼過ぎにはあれよあれよと体調が急回復を示し、夕刻になると赤提灯に誘われ、24時間後には便器とまた向き合っているのだ。

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    HONZ 2019/07/03
  • 『流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則』生命の知恵の結晶 - HONZ

    空や川など自然界には美しい流れがあり、多数のいのちが宿っている。書は自然や社会現象などを含む万物がどのように、なぜ進化するかを明らかにした、極めて意欲的な科学書である。 著者は米国デューク大学特別教授の機械工学者で、米国版ノーベル賞といわれるベンジャミン・フランクリン・メダルを2018年に受賞した。 副題にある「コンストラクタル法則」とは、物質と非物質を問わず進化はより良く流れるかたちに進化する、という物理法則で、著者が1996年に工学系の専門誌に発表したものだ。ちなみに原語のconstructalは彼の造語で、生物と無生物の全てに対して普遍的に成り立つ法則というのが著者の主張である。 コンストラクタル法則は、一般向けには前作『流れとかたち』(紀伊國屋書店、2013年)で啓発書として発表され、読書界に強いインパクトを与えた。今作ではさらに射程を「生命(いのち)」にまで拡張し、自然界に見ら

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    HONZ 2019/06/30
  • 『ストーカーとの七〇〇日戦争』勇気ある行動が教える、社会の硬直性の破り方 - HONZ

    交際8カ月で別れ話を切り出したら、スマートフォンの着信履歴が埋まり、LINEには恫喝のメッセージが届く。身の危険を感じ、警察に相談したら、交際相手は偽名で前科があることまで判明する。私が付き合っていたのは誰なのだろうか。もしかしたら凶悪犯なのか。これからどうなるのか──。 平成生まれの新たな犯罪の1つが「ストーカー」だ。昔からつきまといによる被害はあったものの、長らくは「民事不介入だから警察は手を出さない」が常識だった。1999年に起きた桶川ストーカー殺人事件が契機となり、ストーカー規制法が制定され、犯罪として認知された。 とはいえ、多くの人には対岸の火事だろう。いきなり我が身に降りかかったら、誰もが右往左往するはずだ。 今なら前述のストーカー規制法が犯罪抑止の一助になると思われるかもしれないが、残念ながら著者が被害にあった当時は、SNSへの書き込みは規制の対象外だった。法が現実を後追いす

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    HONZ 2019/06/29
  • 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』無類に面白い!少年の成長物語 - HONZ

    今年もっとも感情を揺さぶられた一冊だ。 なにしろこのを読んでいる間、いい歳して中学生かよ!というくらい落ち着きがなかった。世の中の不条理に憤って汚い言葉を口にしたかと思えば、声をあげてギャハハと笑い、気がつけば目を真っ赤にして洟をかんでいた。 ノンフィクション好きで著者の名前を知らない人はいないだろう。ブレイディみかこさんは地元福岡の進学校を卒業後、音楽好きが高じてアルバイトと渡英を繰り返し、英国で保育士資格を取得、「最底辺保育所」で働きながらライター活動を開始し、2017年に『子どもたちの階級闘争−ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞した。ここ数年、注目を集める書き手である。 書は彼女がこれまで書いたものの中で、もっともプライベートな色合いの濃い一冊といっていいだろう。彼女は英国南部のブライトンという街で、アイルランド出身で大型ダンプの運転手をしている配偶

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    HONZ 2019/06/26
  • 物語はいかに、どれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』 - HONZ

    物語はいかに、どれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』 物語とは、いったいどれほどの力を持っているのか? ギルガメッシュ叙事詩や『イリアス』のように、時に偉大な物語は人々の文化の「基盤」となって、行動や思考に大きな影響を与えることがある。 基盤テキストとはなにか 書では、そのような世界に対して強い影響力を持つ物語のことを「基盤テキスト」と呼称している。その格好の一例は聖書だ。たとえば、アポロ計画二度目の有人宇宙飛行ミッションにあたるアポロ8号が、月の周回軌道を回っている時に、聖書の『初めに、神は天地を創造された』から始まる10節を、何十億もの地球の人々へ向けたメッセージとして読み上げた。 しかし、アポロ八号が教えてくれた最も大事なことは、聖書などの基盤テキスト(foundational text)がいかに強い影響力をも

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    HONZ 2019/06/25
  • 『世界の辺境とハードボイルド室町時代 』歴史学者と探検家の目 - HONZ

    歴史学者と探検家は同じ目をしている。といってもインディアナ・ジョーンズの話ではない。安楽椅子探偵とハードボイルド探偵ほど違う存在がともに事件の解決を追い求めるように、古文書を掘り起こして歴史の細部から埃を払う歴史学者と、命をかける大冒険で世界の辺境に旅をするノンフィクション作家とは、実は同じものを求め、同じところを見ている。彼らは異世界を見て、異世界に旅することを知っている人たちなのである。 このは、中世社会史を専門にする歴史学者と探検旅行を旨とするノンフィクション作家の出会いから生まれた。清水克行は『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ、2006年)で中世における紛争解決から当時の社会のありかたを浮き彫りにした。一方で高野秀行は『謎の独立国家ソマリランド』(の雑誌社、2013年)において、崩壊国家ソマリアの中に奇跡のように生まれたソマリランドという未承認国家を訪れる。はるか過去の史実

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    HONZ 2019/06/24
  • 絶滅寸前のインド仏教復活!その立役者は……『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』 - HONZ

    仏教誕生の地、インド。だが、みなさんはご存知だろうか? インドでは一時、仏教が存続の危機にあったことを。その激減した仏教徒を1億5000万人にまで増やす偉業を成し遂げた最高指導者が、日人であることを。「仏教徒を増やす」ことは、ほかならぬ貧困や差別との闘い、「不可触民」と呼ばれる人たちを救うためであった、ということを。 書で描かれるのは、今もそのインド仏教の頂点に立つ、佐々井秀嶺(しゅうれい)氏の生き様である。 1935年に岡山県で生まれ、32歳でインドに渡った。自殺未遂を繰り返した青年時代、劇的な出来事に導かれてインドに渡り、暗殺者につけねらわれながら差別と闘い続ける現在……、その人生は波瀾万丈の一言では済まされない。 ――しかし恥ずかしながら、私はインドで仏教が滅びつつあったことも、佐々井秀嶺というすごいお坊さんがいることも、まったく知りませんでした! ではなぜ書を手にとったのかと

    絶滅寸前のインド仏教復活!その立役者は……『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』 - HONZ
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    HONZ 2019/06/23