HONZのブックマーク (918)

  • 『世界の辺境とハードボイルド室町時代 』歴史学者と探検家の目 - HONZ

    歴史学者と探検家は同じ目をしている。といってもインディアナ・ジョーンズの話ではない。安楽椅子探偵とハードボイルド探偵ほど違う存在がともに事件の解決を追い求めるように、古文書を掘り起こして歴史の細部から埃を払う歴史学者と、命をかける大冒険で世界の辺境に旅をするノンフィクション作家とは、実は同じものを求め、同じところを見ている。彼らは異世界を見て、異世界に旅することを知っている人たちなのである。 このは、中世社会史を専門にする歴史学者と探検旅行を旨とするノンフィクション作家の出会いから生まれた。清水克行は『喧嘩両成敗の誕生』(講談社選書メチエ、2006年)で中世における紛争解決から当時の社会のありかたを浮き彫りにした。一方で高野秀行は『謎の独立国家ソマリランド』(の雑誌社、2013年)において、崩壊国家ソマリアの中に奇跡のように生まれたソマリランドという未承認国家を訪れる。はるか過去の史実

    『世界の辺境とハードボイルド室町時代 』歴史学者と探検家の目 - HONZ
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    HONZ 2019/06/24
  • 絶滅寸前のインド仏教復活!その立役者は……『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』 - HONZ

    仏教誕生の地、インド。だが、みなさんはご存知だろうか? インドでは一時、仏教が存続の危機にあったことを。その激減した仏教徒を1億5000万人にまで増やす偉業を成し遂げた最高指導者が、日人であることを。「仏教徒を増やす」ことは、ほかならぬ貧困や差別との闘い、「不可触民」と呼ばれる人たちを救うためであった、ということを。 書で描かれるのは、今もそのインド仏教の頂点に立つ、佐々井秀嶺(しゅうれい)氏の生き様である。 1935年に岡山県で生まれ、32歳でインドに渡った。自殺未遂を繰り返した青年時代、劇的な出来事に導かれてインドに渡り、暗殺者につけねらわれながら差別と闘い続ける現在……、その人生は波瀾万丈の一言では済まされない。 ――しかし恥ずかしながら、私はインドで仏教が滅びつつあったことも、佐々井秀嶺というすごいお坊さんがいることも、まったく知りませんでした! ではなぜ書を手にとったのかと

    絶滅寸前のインド仏教復活!その立役者は……『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』 - HONZ
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    HONZ 2019/06/23
  • 『138億年宇宙の旅』 - HONZ

    このを読んでいると、目がくらくらします。 これにはいくつかの意味があります。まず、息を呑む展開でぐいぐいと話が進んでいくので、そのままの勢いで読み続けると目が回り始めます。ときどき立ち止まって深く息をして、ちょっと戻ってからあらためて読み始めないといけません。 次に、「あなた」と呼びかけられて、いきなり星の爆発に出くわされ、ブラックホールからジェットで噴き出され、飛行機に乗って400年後に行き、極小になって電子をつかみ(そこない)、果ては超極小の余剰次元を漂ってたくさんの宇宙を見下ろす羽目になるのです。次に何が起こるかわからない旅に引きずり出されてしまいます。 そして旅の間に解説が入り、天体の仕組みから宇宙の構造、高速の世界の特殊相対性理論から極小の世界の量子力学、そして重力の一般相対性理論と、専門の大学院生でも四苦八苦する物理学の深遠な内容が、あっという間に頭に植え付けられてしまうので

    『138億年宇宙の旅』 - HONZ
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    HONZ 2019/06/22
  • 『流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則』物理学から見えてくる生命の新しい景色 - HONZ

    生命とは何か? こう問われたら、多くの人は生物学というフレームワークを用いて解を導こうとするだろう。しかし、書のアプローチは一味違う。徹底的に物理学からアプローチして、この問いに挑もうとするのだ。 著者は2018年に米国版ノーベル賞と言われるベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞した科学者。これだけ聞けば、書には難解な数式が多く出てくると思うかもしれないが、それは違う。 書が拠り所にするのは、著者が「コンストラクタル法則」と名付けた法則。それは書で以下のように説明される。「有限大の流動系が時の流れの中で存続するためには、その系の配置は、中を通過する流れを良くするように進化しなくてはならない」。 書は、コンストラクタル法則の提唱者である著者が、森羅万象を物理学的な見地から語ることで、その法則の有用性を示した一冊である。 この法則の意義深さは、生命と捉える対象が、無生物の領域にも及

    『流れといのち 万物の進化を支配するコンストラクタル法則』物理学から見えてくる生命の新しい景色 - HONZ
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    HONZ 2019/06/22
  • 『富士山はどうしてそこにあるのか』 美しい地形には、賞味期限がある - HONZ

    HONZが送り出す、期待の新メンバー登場! 鎌田 浩毅は言わずとしれた京大の人気教授にして、火山学者。専門の地球科学のみに留まらない読書量や、その深い教養から、”HONZのイニエスタ”の異名をとる。いや、見た目とかじゃなくて…。今後の彼の活躍にどうぞ、ご期待ください!(HONZ編集部) 新幹線の車窓から見る富士山は美しいが、これがいつ噴火してもおかしくない活火山であることを知る人は少ない。書は日人の「心のふるさと」と言っても過言ではない富士山の地学的な成り立ちを、初心者にも分かりやすく解説した入門書である。著者は長年、東京都立大学(首都大学東京)で教鞭を執ってきた地形学者で、活断層の専門家でもある。 書はNHKラジオ第2放送のカルチャーラジオ「科学と人間」で放送された内容に加筆して書かれた。富士山のみならず関東平野を含む日列島の形成史が図版を交えて解説される。地球科学の基概念であ

    『富士山はどうしてそこにあるのか』 美しい地形には、賞味期限がある - HONZ
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    HONZ 2019/06/20
  • 『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ

    白人によって作り上げられた「ファストフード帝国」。画一化されていて正直面白みに欠ける反面、汎用性の高さゆえに世界中至るところへ浸透している。恥ずかしながら、書を読む前に「アメリカ文化」としてまず思い浮かぶのはこの印象だった。 しかしその原点にまで遡っていくと、まったく異なる景色が見えてくる。元をたどればそこには画一化とはほど遠い多様さがあり、また必ずしも白人たちが主役だったわけでもない。 アメリカを代表するとされるべ物の中には、実は非西洋にルーツを持っている例が少なくない。ポップコーンは先住インディアン由来のべ物だし、フライドチキンは黒人奴隷と深い関わりを持っている。 外部からの影響の大きさを抜きにして、アメリカ文化を語ることはできない。書はそんな立場から、従来のイメージとは異なるアメリカの実像に迫る一冊だ。 植民地時代〜独立革命期まで遡っていくと、アメリカ文化の形成

    『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史 - HONZ
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    HONZ 2019/06/19
  • 『キン肉マン「超人」初回限定ケース版 』を買ったのは、どういう人たちなのか? - HONZ

    これがノンフィクションであって、HONZの読者世代と重なっているのであろう重要なである。ということは吉村 博光の熱すぎる説明(というか言い訳?)に譲りましょう。とにかく、発表されたときに「すごいが出てくるな」と思った人は間違いなくジャンプ黄金期世代。その証拠に、書店店頭での予約も大盛り上がりで、当初想定を超える初版になったとか。 学研の図鑑シリーズにちゃっかり入って読者を待つ『キン肉マン「超人」』はいったい誰に買われているのでしょう。今回のテーマはこちらです。 まずは読者層から見ていきます。 この「超人」には通常版と初回限定ケース版の二種類のバージョンが用意されています。今回は発売日すぐに購入したより熱心な読者に読まれているであろう、初回限定ケース版について見ていきます。 ジャンプ黄金期と言われる1985年~90年あたりに小学生だった世代は今ちょうど40代。まさにその世代に購入されてい

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    HONZ 2019/06/17
  • 『資本主義と闘った男』我々がまだ知らない本当の宇沢弘文とは - HONZ

    私たちはまだ当の宇沢弘文のことを何も知らない・・・これが書を読了しての思いである。そして、宇沢とは何者で、どこから来て、どこへ行こうとしていたのか、その全てを詳らかにしてくれるのが書である。これをきっかけに宇沢の功績の再評価が行われるに違いないと確信させる、経済学歴史に残る名著である。 「ノーベル経済学賞に最も近かった日人」であり、「社会的共通資」(Social Common Capital)の重要性を訴えた思想家である「宇沢弘文」という巨人の全貌を理解するのは至難の業である。その裾野は限りなく広く、その頂きは限りなく高く、私たちを容易には近づけてくれない。 そうした意味で、宇沢は自身が語っているように、ひとりぼっちの孤独な思想家であり社会活動家だった。多くの天才たちが同時代の人々に理解されてこなかったように。そして、その孤高の天才の86年に及ぶ生涯を、大部な640頁の評伝にま

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    HONZ 2019/06/16
  • 『「うつ」は炎症で起きる』 「それは体の問題」という新たな視点 - HONZ

    若い医師はあるとき、リウマチ性関節炎と診断されていた女性患者がうつ病をも患っていることに気づいた。そのささやかな発見に気をよくした彼は、上機嫌で先輩医師にその旨を伝える。だが、先輩医師から返ってきた反応はきわめて淡白なものであった。「うつ病? そりゃ、君だってそうなるだろうよ」。 以上は、書の著者エドワード・ブルモアが内科の研修医時代に実際に経験したことである。そしてそのエピソードは、うつ病がこれまでどのように扱われてきたのかをよく物語っている。それはすなわち、「うつ病のような精神疾患はすべて心の問題だ」という扱われ方である。「そりゃ、君だって関節炎のことで悩むだろうし、そうしたらうつ病にでもなるだろうよ」というわけだ。 しかし、著者はいまやまったく別様に事態を見ている。その見方は、かつては自分でも「いかれている」と思えたようなものだ。著者曰く、先の女性患者は「リウマチ性疾患のことを思い

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    HONZ 2019/06/12
  • とまどわないペリカン 『ハシビロコウのすべて』 - HONZ

    「動かない鳥」として、大人から子どもまで人気があるハシビロコウ。しかし、意外にも、そのは世に少ない。書は待ちに待った「一冊まるごとハシビロコウ」である。日の動物園で会える13羽の性格や名前の由来などを写真とともに紹介。『ざんねんないきもの事典』の今泉先生監修のもと、謎に満ちたその生態をイラストで徹底解説している。 ハシビロコウという鳥は、眺めているだけで想像力をかきたてられる鳥だ。書もまた然りである。を開いて、最初に目に入った写真(下)では、その個体差に陶然となった。様々な顔つきの人がいるように、彼らも個体ごとに顔つきが相当違うのだ。その顔つきを見比べるのは、ことのほか楽しい。 その後に続く章では、野生のハシビロコウの写真をもとに、出会いから巣立ちまでをストーリー仕立てで紹介している。ジッとして動かない写真はもちろん、大空をはばたく貴重な写真や、お辞儀して求愛している写真などが

    とまどわないペリカン 『ハシビロコウのすべて』 - HONZ
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    HONZ 2019/06/09
  • 忘れ去られしカオスな物語群にどっぷり浸かる『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』 - HONZ

    忘れ去られしカオスな物語群にどっぷり浸かる『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する』 もうタイトルからして「なんじゃこりゃ」だが、読み終わっても「なんじゃこりゃ」である。でも面白いんだから書評するより仕方ない。書(通称・まいボコ)を一言で説明するならば、明治時代、夏目漱石や森鴎外といった純文学作家の作品よりも人気を博した忘れ去られしエンタメ作品(著者は「明治娯楽物語」と呼ぶ)が多数存在し、それらをツッコミ入れつつざっくばらんに紹介しまくるだ。なぜ現在この作品群の知名度が全くないかというと、当時はまだ文学が未成熟、手探り状態にあり、現代の水準からすればどれもこれも「小説未満」で、時代の流れの中で風化してしまったためだ。要するに今読んでもつまらないのである。 とはいえ、どんなに粗雑でくだらなくても、そこには作

    忘れ去られしカオスな物語群にどっぷり浸かる『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』 - HONZ
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    HONZ 2019/06/06
  • 『わたしは哺乳類です』母乳から知能まで、進化の鍵はなにか - HONZ

    精巣が体外に出たわけ 「オギャー」と産声をあげて母乳を求めたことなどとんと思い出せないように、わ たしたちは自分が哺乳類であることも日頃すっかり忘れている。でも、紛れもなく 哺乳類の一員で、だからこそ人生は“哺乳類生”でもあるのだ。わたしたちの生命 の大きなサイクルは、そのまま哺乳類のスタイルに深く根ざしている。 それなのに、わたしたちは哺乳類が「どこから来て、どのように今の姿になったの か」、その“進化の鍵”をまだ解き明かしてはいない。書は最新の知見を盛り込 みながら、こうした謎に挑んでいく。 著者はサイエンスライターにして、神経生物学の博士号を持ち、ロンドン大学ユニ バーシティ・カレッジとコロンビア大学で12年間も哺乳類の脳などの研究に携わっ てきた。うってつけの名ガイドだが、私的な体験(子どもの誕生、サッカーのゴー ルキーパー、森の思い出など)もまじえることで、親しみやすく楽しい読

    『わたしは哺乳類です』母乳から知能まで、進化の鍵はなにか - HONZ
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    HONZ 2019/06/03
  • 『サカナ・レッスン 美味しい日本で寿司に死す』 - HONZ

    著者キャスリーン・フリンと夫のマイクと待ち合わせをしたのは、読者ミーティングが開催された目黒セントラルスクエア内のスターバックスコーヒーだった。二人が私を見つけやすいように、私は窓際の席を選んで座っていた。 五分ほど経過した頃だろうか、ひときわ背の高い、恰幅の良いマイクの姿が見えた。マイクの少し後ろをキャスリーンが歩いていたが、気が急いているのか、それとも小柄な彼女が歩幅の広いマイクについて行くのに苦労しているのか、ほとんど走っているように早足だった。その上とても緊張している表情で、口元をきゅっと結び、いつもの明るい笑顔はどこかに消えていた。店の入り口近くになって、キャスリーンはよりいっそう緊張したように見えた。緊張どころか、彼女は今にも泣き出しそうな表情をしていたのだ。大きな両目にいまにも溢れんばかりに涙をためて、焦りながら店内に入って来る様子は私のいる場所からもよく見えていた。いつの間

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    HONZ 2019/06/02
  • 文学を語ることばで科学を語る。『科学する心』 - HONZ

    「あまりに面白くて一晩で一気に読み終えました。この広大なテーマでエッセイを書ける人は他にいません」。池澤夏樹・著『科学する心』の帯に書かれた吉川浩満さんの推薦文です。文学者のことばで科学を語るエッセイ集として話題になっている『科学する心』。このの刊行記念として、三省堂書店池袋店の主催で行われた池澤夏樹さんと吉川浩満さんの対談イベント(4月25日)の模様をダイジェストでお届けします。(HONZ編集部) 池澤:今日はまず、吉川さんに御礼を言わないといけません。このを出す前に、何かとんでもない間違いをしているんじゃないかと心配になって、ゲラをお送りして、目を通していただきました。いわば学術的な査読をお願いした。実際、あちこちにあった間違いを教えていただき、そのおかげで無事に出版できました。大変ありがたいことでした。 吉川:すごく面白くて、一晩で一気に読みました。すぐに編集の方にメールを送っ

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    HONZ 2019/06/02
  • 『宇宙と宇宙をつなぐ数学』未来からやってきた数学理論 - HONZ

    数学に関するを読んで感動したのは初めてかも知れない。以前、NHKスペシャルで、ロシアの天才数学者グリゴリ・ペレリマンが数学の超難問「ポアンカレ予想」を証明した過程を追ったドキュメンタリー番組『100年の難問はなぜ解けたのか ~天才数学者失踪の謎~』を見て、数学の世界のすさまじさに感心したものだが、それをはるかに上回る衝撃である。 2012年8月30日、京都大学数理解析研究所の望月新一教授が、ホームページ上に公開した500頁超に及ぶ4つの論文で、後に「未来から来た論文」と呼ばれることになる全く新しい理論である「宇宙際タイヒミュラー(Inter-Universal Teichmüller Theory)理論」を打ち出し、数学にとって極めて重要な「ABC予想」を解決したと主張して、数学界に激震が走った。 「ABC予想」は、a+b=cを満たす互いに素な自然数の組に関する予想で、「フェルマーの最終

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    HONZ 2019/05/26
  • 『執念深い貧乏性』無意識の隷属状態からいかに抜け出すか - HONZ

    読者を選ぶだろう。タイトルからは内容を想像できず、目次を眺めたら困惑してしまうはずだ。第1章「どすこい貧乏、どすこいセックス─女力士はエイリアン」から始まり、この調子で第12章「ババア一擲─なにがわたしをこうさせたか」まで続く。あえて書評らしく紹介すれば、「アナキズム(無政府主義)を専門とする著者が現代の課題を先人の生き様と結びつけ、型にはまらない文体でその解決の処方箋を綴った1冊」となろうか。 取り扱う話題は安倍政権、奨学金、共謀罪、都政、天皇制からキムチ、即身仏まで。通底しているのは、何にも支配されないと隷属を拒否する著者の意志である。 権力は人間を縛るが、当に必要なのか。歴史を振り返れば、革命時など支配権力がない状態でも、人々は生きてきたではないか。「アァ、アアッッ」とか「ハ、ハヒャア」「クソくらえ」といった擬音語や叫びにあふれた文体で、青臭く聞こえかねない主張をこれでもかと畳み

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    HONZ 2019/05/25
  • 大人が買わざるを得ない図鑑 『キン肉マン「超人」初回限定ケース版 (学研の図鑑)』 - HONZ

    「もしもキン肉マン超人が実在したら・・・?」700体以上の超人を仲間ごとに分類し、美しいイラストで紹介した図鑑が発売になった。しかも、来年50周年を迎える「学研の図鑑」のラインナップとして。なつかしさバクハツ、激アツである。発売前から大反響で、多数の予約注文が入ったそうだ。ただし、購入者層には偏りがあったという。 それは、もしかしたらHONZ閲覧者層と年代・性別においてかなり重なるのではないか。しかし、生活動線から、はずれているだろう。私は、情報を届けたいと思った。キン肉マンはフィクションだが、図鑑はノンフィクションである。これは詭弁かもしれないが、どうかHONZで紹介させていただくことをお許しいただきたい。 中学の頃、私のあだ名はラーメンマンだった。残虐超人だが、私は喜んでそれを受け入れた。なぜなら、「キン肉マン」を愛する同級生のみんなのことが大好きだったからである。ちなみに、高校では「

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    HONZ 2019/05/24
  • 『性と欲望の中国』爆買いから爆セックスへ - HONZ

    「爆買いから爆セックスへ」。手に取るのを敬遠してしまいそうな帯だが、先日、『八九六四』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した書き手の作品と聞けば買いの一手だ。とはいえ、「爆セックス」が受賞後第一作とは幸なのか不幸なのか。 「はじめに」で著者が指摘するように、カネやのように人間の欲望を反映する営みで社会を読み解くのは非常に有効である。エロも然りである。いや、むしろ、エロこそが欲望の塊である。中国の場合、その塊が14億人からなるとなればなおさらだろう。 中国では長らく一人っ子政策など生殖への支配が続いた歴史もあり、性にオープンな印象は薄いが、ここ10年ほどでめまぐるしく変わってきたという。2000年代中頃までは、世界でも性満足度が日を下回り、世界でワーストだったが今やセックスの頻度が平均で週1.2回、2回以上が3割を超えるとか。1ヶ月間以上性行為がないセックスレスの割合は未婚者も含めて7%

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    HONZ 2019/05/20
  • 『人喰い ロックフェラー失踪事件』精神世界と現代社会、両者間の深刻な断絶 - HONZ

    「虚実皮膜」とは、芸術は虚構と事実との、皮と膜とのようなほんのわずかな間にあるという意味で、近松門左衛門が語ったとされる言葉だ。しかし、実際にそうかは時と場合によるだろう。書で扱われる「ロックフェラー失踪事件」について知れば、「虚実の皮膜」にあるのは悲劇でしかないということを痛感する。 事件は1961年のオランダ領ニューギニアで起きた。ロックフェラー家の一員として輝かしい未来を約束されていた、マイケル・ロックフェラーという米国の白人青年が、現地のアスマット族によって殺されたのだ。単なる殺人ではなく、首狩りに遭い、その後べられてしまった。 当時、さまざまな事情から真相は闇に葬られ、事件の原因はその後「失踪」や「溺死」とされた。書はその事件の一部始終を徹底的に調べ上げ、なぜマイケルが殺されなければならなかったのかという核心に迫った衝撃のノンフィクションである。 アスマット族の世界は、西洋

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    HONZ 2019/05/18
  • 『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない - HONZ

    平成が終わった。元号なんて日でしか通用しない、世界は西暦だ、などと言われてしまえばその通りなのだが、大学入学で上京したのが平成元年だったこともあって、個人的にはやはり平成の終焉は感慨深いものがある。 平成とはどういう時代だったのだろうか。 平成元年、1989年12月29日に日経平均は史上最高値の3万8915円87銭をつけた。ところが翌年1月から株価の下落が始まり、夏には都心の地価も下がり始めた。1991年(平成3年)2月に景気が後退局面に入ると、あとは坂道を転げ落ちるように日経済は転落して行った。その後に長すぎる停滞が待っていたのはご存知の通りだ。 平成とはバブルのてっぺんから始まり、奈落へ転げ落ちて負った複雑骨折の大怪我が癒えることのないまま、そのほとんどを寝たきりで過ごしていたような時代だった。平成が終わり、令和が始まった瞬間の空騒ぎを見ていると、停滞をなんとかしてリセットしたいと

    『トッカイ』バブルの後始末はまだ終わっていない - HONZ
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    HONZ 2019/05/14