先週のこと。完全に散ってしまう前にと、自宅から歩いて三十分ほどの都立桜ヶ丘公園・大谷戸公園へ桜を見に行った。 ここは多摩丘陵に三つの公園が重なって形成される場所で、中心部の「旧多摩聖蹟記念館」周辺は地味ながら独自の雰囲気を持った桜の名所だ。 ぼくが通わされていた保育園や市の児童館はこの公園からほど近い住宅街の中にあり、小学校ぐらいまではよく遊びに行ったものだった。いまでも桜が咲く季節になると、散歩に出かけている。 辺りの風景は二十数年前とあまり、というか、ほとんど変化していない。 既視感が、ノスタルジーの感情を強く喚起する。 既に葉桜になりかけている木も多く、満開のタイミングは逃してしまったが、のどかな丘陵に点在する桜はやはり美しかった。 晴れわたった空とぬるい微風、汗ばむほどの気温のなかでうろついた丘はとても穏やかにまどろんでいて、その雰囲気は、頻発する余震や危機に直面している原発という