戸惑う医師たち。日本の地方病院が、サイバー攻撃にやられた。 X線の画像、投薬の記録、8万5000人分の患者の電子カルテが、失われてしまった。 災害と同様の非常事態宣言を発した病院。不安を隠さない患者たち。 人々の命を守る病院が、ハッカーに狙われたとき、何が起きるのか。 衆議院議員選挙の投開票日の10月31日。 未明に事件は起きていた。 およそ8000人が暮らす徳島県西部の山あいのつるぎ町。町の医療を支える町立半田病院の当直勤務に当たっていた看護師、寒川忍さんは、突然、院内のプリンターが、けたたましく動き出したことに驚いた。 はき出されてきた紙には、英文やURLが印刷されていた。