おちび 作者:エドワード・ケアリー出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/11/29メディア: 単行本〈アイアマンガー三部作〉のエドワード・ケアリー最新作は、イギリスのロンドンにある蝋人形館マダム・タッソー館を創立したマリー・タッソーについての物語である。1761年に生まれ、早々に父を亡くし、医師であり後に蝋人形制作を行うようになるクルティウス医師の家政婦として母と共に仕え、その技術を吸収し、後にルイ16世の妹エリザベートにその技術を教える先生となり──と、数奇な人生を歩むことになる彼女が、死の淵にある89歳の時点からその人生を振り返る構成をとっている。 正直、〈アイアマンガー三部作〉という僕の人生の中でも特別な位置を占める傑作を読んだ後に、エドワード・ケアリーが次の題材として選んだのがマリー・タッソーを主人公とした歴史的な小説であると知った時は、少し不安があったものだ。勿論ケア