2019年7月のある日、諫山創は、六本木にそびえる「森タワー」の52階にある、シックなモダンアートギャラリーを歩き回っていた。 ジャン=ミシェル・バスキアの絵画が飾られているギャラリーの壁には、諫山作のベストセラー漫画『進撃の巨人』の原画も並んでいた。原画展は、この血なまぐさい大作の10周年を記念して開かれたものだった。 この漫画の舞台は、皮膚が剥がれ、血管がむき出しで、高層ビルほどの背丈の人食い巨人が支配する世界だ。巨人たちは、壁に囲まれた都市に避難した人間たちを恐怖に陥れる。 『別冊少年マガジン』に巨人が初めて登場してから10年、巨人と戦う登場人物たちは日本のポップカルチャーに巨大な足跡を残してきた。 日本最大の出版社である講談社は、31巻の連載(註:現在は32巻)で約1億部を発行している。テレビアニメ化もされたこの作品は世界的にヒットし、実写映画2部作、ビデオゲーム、おもちゃやトート
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