劇中で渋沢栄一が発した「時が足りねぇ」。新政府に参加した多くの旧幕臣らが怒涛の如く取り組んだ事業の数々。やっぱり新政府の事業は「徳川近代」の延長だったのか?かつて歴史ファンを虜にし、全盛期には10万部を超える発行部数を誇った『歴史読本』(2015年休刊)の元編集者で、歴史書籍編集プロダクション「三猿舎」代表を務める安田清人氏がリポートする。 * * * 渋沢を引き留めた大隈重信 明治2年(1869)11月、渋沢栄一(演・吉沢亮)は明治政府に民部省租税正(そぜいのかみ)に任命された。現在でいえば、財務省の主税局長のような役職だった。 しかし、渋沢はただちにこの職を辞任するつもりだったようで、11月18日、当時大蔵大輔(次官)だった大隈重信(演・大倉孝二)の元を訪ねた。大隈は肥前佐賀藩出身。明治維新の際は先輩の副島種臣とともに将軍徳川慶喜に大政奉還を建言しようと脱藩をしたものの、藩の役人につか