★★★☆☆(評者)池田信夫 財務官僚の出世と人事 (文春新書) 著者:岸 宣仁 文藝春秋(2010-08) 販売元:Amazon.co.jp クチコミを見る 財務官僚というと、世間では「成績優秀なエリート」と思われているのだろうが、私の学生時代の印象では、大蔵省に入ったのは秀才というより権力志向の強い特殊な学生だった。大学に入ったときから公務員試験の勉強をし、授業には欠かさず出席する。大蔵省は良が3つ以内(あとはすべて優)でないとだめだといわれたので、入るのは勉強に疑問をもたず先生に忠実な学生だった。 こういう採用のしかたが財務省の業務に適しているかどうかは疑問である。本書も指摘するように、学校秀才タイプはあまり事務次官にならない。それは財務省が官庁の元締めであると同時に、政治的な利害を調整する役割をもっているからだ。これは本来は政治の仕事だが、自民党政権はその仕事を役人に丸投げして利益誘