韓国現代史における重要な節目でありながら、これまで映画化されなかった「事件」がある。 1979年、独裁者といわれた朴正煕大統領が自らの側近に暗殺された後、国民の間では衝撃とともに民主化への期待が高まり、チェコスロバキアの「プラハの春」になぞらえて「ソウルの春」といわれた時期のさなか。12月12日、ソウルの夜空に銃声が轟いた。当時、保安司令部の司令官をつとめていた全斗煥が陸軍内の秘密組織“ハナ会”を率いて、新たな独裁者として君臨すべく起こしたクーデターだった。 「12.12.軍事反乱」といわれるこの事件を初めて映画として描いた『ソウルの春』。「当時感じた憤りや喪失感が本作に挑んだ原点」というキム・ソンス監督に話を聞いた。 ファン・ジョンミンの演技を見守るキム・ソンス監督。ファン・ジョンミン扮する独裁者の座を狙う欲望の化身チョン・ドゥグァンは、若き日の全斗煥の姿をフィクショナイズした人物だ ―