師走の吉祥日に突如として投下された、血と艶がかぐわしくも凄惨に匂う和風伝奇小説。 両面宿儺という、現代に生きる我々にとっては異形と評される存在をヒロインに据える発想、それでいて可愛さ・畏ろしさ・健気さをこちらへ丁寧に示してくる手腕もさることながら、主人公フルクマのぎらつくばかりの覚悟と、その最奥に確かにある優しさと勇ましさが心をつかんで離さない。そして対比するかの如き、今回の首魁の思わず顔をしかめたくなるおぞましい振る舞いもまた……。 無駄なくソリッドでありながら、こちらの想像力を否応なしに掻き立てる文体は、さすが最前線で活躍されている著者の一人、その実力というべきか。 とにもかくにも…続きを読む