自転車に戻って来た鴨居の耳を、短いクラクションが襲った。険しい顔で音のした方向を向くと、仲町が乗っていた覆面パトカーがハザードランプを点灯して舗装路上に停まっていた。その傍らには咥え煙草の甲山と缶コーヒーを飲む草加が立ち、運転席には面倒臭そうな表情の仲町が座っていた。 「え……?」 困惑する鴨居を、草加が手招きして呼んだ。一瞬躊躇したものの、鴨居は自転車を押して車に歩み寄った。 「何スか?」 ぶっきらぼうに問いかけた鴨居に、草加が上着のポケットから缶コーヒーをもうひとつ取り出して放った。反射的に受け取った鴨居が更に戸惑っていると、甲山が近寄って言った。 「何で辞めないか、って訊いたよな?」 「あ、ええ」 若干目を泳がせる鴨居を真っ直ぐ見つめていた甲山が、突如口角を吊り上げた。 「他に取り柄がねぇんだよ」 「は?」 いよいよ困惑を極めた鴨居に、草加が車のルーフを叩いて告げた。 「まぁとにかく
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