ブックマーク / kakuyomu.jp (132)

  • ひとちがい #19 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    バンデン・プラを月極駐車場(つきぎめちゅうしゃじょう)に停(と)めた叶は、事務所には戻らずに『喫茶 カメリア』に入った。夕の時間には遅(おそ)い為、客はまばらだった。 「あ、いらっしゃ〜いともちん、珍(めずら)しいわねこんな時間に?」 やや困惑(こんわく)した様な顔で出迎(でむか)えた桃子に、叶は微笑(びしょう)しつつ答えた。 「ちょっと色々あって疲(つか)れちゃって、コンビニにも寄れなくてさ」 「そぉなの〜、で、まだ見つかんないの? 結婚詐欺師(けっこんさぎし)」 「ああ」 桃子とやり取りしながらカウンター席に陣取った叶は、桃子が差し出す水の入ったグラスを受け取るなり半分近くを胃に流し込んだ。 今日は午前中から石橋と松木に遭遇(そうぐう)、その後に田中の自宅アパートの持ち主に会い、『ホストクラブ BURAI』へ行ってから『カオルプロモーション』を訪(おとず)れて門前払(もんぜんばら)い

    ひとちがい #19 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/08/04
    カクヨム調子悪い?
  • ひとちがい #18 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    バンデン・プラを停(と)めた所まで戻ろうと歩き出した叶は、ふと誰(だれ)かに見られている様な気分になって足を止めた。 「石橋さん? いや、まさかな」 頭を動かさずに呟(つぶや)くと、叶は再(ふたた)び歩(ほ)を進めた。だがバンデン・プラの横をわざと通り過ぎて尚(なお)も前進し、途中(とちゅう)に立つ自販機の前で止まって缶コーヒーを購入(こうにゅう)しながら、横目で自分の来た方向を観察(かんさつ)した。 居(い)た。灰色(はいいろ)のスーツを着(き)た三十代後半から四十代と思(おぼ)しき男性が、歩道の際(きわ)に立ち止まって右手に持ったスマートフォンを見つつ、時折(ときおり)叶の方へ視線を上げている。周辺は歩行者ばかりで、横断歩道等(おうだんほどうなど)も無(な)い箇所(かしょ)なので明らかに不自然だ。 叶は取出口から缶コーヒーを出してその場でステイオンタブを起こすと、男性を一瞥(いちべつ)

    ひとちがい #18 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/07/27
    自分で書いといて何だが、面倒臭い展開になったな。
  • ひとちがい #16 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    白羽邸を後にした叶は、名刺に記載された住所を頼りにバンデン・プラを『ホストクラブ BURAI』へ向けた。先日は会員制のクラブで今日はホストクラブと、妙(みょう)に水商売(みずしょうばい)づいている。 腕時計を横目で見ると、午後二時半過ぎだった。さすがに男性の叶が客としてホストクラブに入るのは気が引けるし、店側からも断(ことわ)られるだろうから、開店する前に到着する必要があった。 『ホストクラブ BURAI』は繁華街(はんかがい)から少し離れた所に在(あ)ったので、叶は容易(ようい)にコインパーキングを発見してバンデン・プラを停める事が出来た。運転席を降りた叶は、近くの自販機で缶コーヒーを買い、その場で飲み干してから店へ向かった。 鉄道の駅から徒歩(とほ)で十分程の距離に在る雑居ビルの三階に『BURAI』が入っていた。叶がエレベーターで三階に上がると、斜向(はすむ)かいに開け放たれたドアが見

    ひとちがい #16 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/07/13
    私の中のホストってこんなイメージ。
  • ひとちがい #15 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    事務所に戻った叶は、途中でコンビニエンスストアに寄って購入(こうにゅう)した昼(ちゅうしょく)をレジ袋ごと応接テーブルに置くと、デスクの引き出しからノートパソコンを取り出してソファに腰を下ろした。OSが立ち上がるのを待つ間に、袋の中から唐揚(からあ)げ弁当と缶コーヒーを出してテーブル上に広げる。缶コーヒーのステイオンタブを起こした所でOSが起動(きどう)し、画面に複数(ふくすう)のアイコンが表示された。叶は右手と口で割(わ)り箸(ばし)を割りながら、左手でポータルサイトを呼び出して検索(けんさく)を始めた。取(と)り敢(あ)えずは八日前の日付と『殺人事件』と言うワードのみで検索をかけてみる。何せ、石橋から得られた情報が非常に少ないので他に検索ワードが思いつかないのだ。 結果、何件かの事件報道がヒットした。叶は唐揚げを頬張(ほおば)りつつトピックを吟味(ぎんみ)し、ひとつの事件に引っ掛かり

    ひとちがい #15 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/07/06
    こう言うデタラメな聞き込みって、叶がやるのは珍しい。
  • ひとちがい #14 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    「殺人?」 叶が横目で石橋を見て訊(き)き返した。石橋は無言で頷(うなず)いてから、真っ直ぐ前を見て口を開いた。 「八日前、出版社の社員の死体が発見された。現場に争(あらそ)った形跡があったので他殺(たさつ)と断定し、捜査を始めた。その過程(かてい)で、鑑識(かんしき)がある物を見つけた」 「勿体(もったい)つけんなよ」 叶が苛立(いらだ)ちを隠さずに先を促(うなが)すが、石橋が話す前に松木が飲料水(いんりょうすい)のペットボトルを三抱えて戻って来てしまった。 「ありがとう」 石橋が顔を上げて礼を言うと、松木は頭を下げつつブラックコーヒーを渡し、次に叶を見下ろして「お前はこれだ、ありがたく頂戴(ちょうだい)しろ」と告げるなり、叶に向けてペットボトルを一放った。明らかに顔を狙(ねら)った投擲(とうてき)だったが、叶は難(なん)なく左手で受け取った。だがラベルを見て表情を歪(ゆが)める。松

    ひとちがい #14 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/29
    松木は書いてて楽しい。
  • ひとちがい #13 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    翌朝、日課のロードワークを終えて事務所に戻った叶は、ジャージからスーツに着替えるとスマートフォンを掴(つか)んで『喫茶 カメリア』へ降りた。まだ開店して間も無い為(ため)、店内は客もまばらだった。 「あ、ともちんおはよ〜」 トレーを抱えた桃子が歩み寄って挨拶(あいさつ)した。叶も笑顔で返して、奥のカウンター席に陣取った。すぐに桃子が水の入ったグラスを差し出きて尋(たず)ねた。 「サンドイッチ盛り合わせでいい?」 「ああ、頼むよ」 肯(うなず)いた叶は、キッチンへ行く桃子を見送ってからスマートフォンを取り出した。メール着信の通知が来ていたので開くと、差出人は狩野リョウだった。文には田中忍の住所が記載され、最後に『もうあいつの話はこれっきりにしてくれ』と書かれていた。添付(てんぷ)されているファイルは、田中忍の顔写真だった。現像(げんぞう)した写真を撮影したらしく、やや画質が粗(あら)かった

    ひとちがい #13 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/22
    捜査一課コンビは久々に出すが、特に松木は書いてて楽しい。
  • ひとちがい #12 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    「疫病神(やくびょうがみ)?」 叶がオウム返しに問うと、狩野は深く頷き、勢い良くビールを呷(あお)ってから答えた。 「ああ。あいつと組んで歌い始めてから、トラブルの連続だった。それも全部、あいつが原因でな」 叶も烏龍茶を飲んでひと息吐くと、運ばれて来たカツ閉じ煮を受け取りつつ言った。 「トラブルってどんな? 言える範囲(はんい)で構わないぜ」 狩野はすぐには答えず、来たばかりのカツ閉じ煮をひと切れ摘(つま)み、ビールで流し込んでから口を開いた。 「路上でやってた頃は、曲に対して文句つけて来たり、俺達を下手糞(へたくそ)だと罵(ののし)って来た奴等と必ず喧嘩(けんか)になったし、少しでも可愛い娘見つけたら歌い終わった後でナンパして、その娘が彼氏持ちだとやっぱり喧嘩、インディーズでCD作った時は、レコーディングスタジオのスタッフと揉(も)めて制作中止の上にスタジオ出禁、漸(ようや)くCDが出来

    ひとちがい #12 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/15
    美人局に引っ掛かった事はありません、私は。
  • ひとちがい #11 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    アンコールを含めて約一時間半のライヴが終わり、場内の興奮が冷めやらぬ中、叶は足早にホールから出て軽く頭を振った。最後方に居たにも関わらず、ステージの両脇に設置された大型スピーカーから弾き出される轟音(ごうおん)に、慣れていない叶はすっかりやられてしまった。 グッズ販売のテーブルの前を横切って階段を上ると、外には完全に夜の帳(とばり)が降りていた。叶は大きく息を吐き、近くの自販機で缶コーヒーを購入すると『HAGANE』の出入口の対面の壁に背中を預け、次々と吐き出される観客達を眺(なが)めながらコーヒーを啜(すす)った。腕時計を見ると、午後七時半近かった。 周囲から人影が失(う)せた頃、RANKOを先頭にバンドメンバーやスタッフが『HAGANE』から出て来た。叶は明後日の方向を向いて、駅の方向へ向かう一行をやり過ごした。恐らく、これから打ち上げでもするのだろう。その後ろから、ビリーに伴(ともな

    ひとちがい #11 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/08
    カレーポテトとカツ閉じ煮はかつてのアルバイト先での飲み会での定番だった。
  • ひとちがい #10 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    叶が『HAGANE』を出て階段を上り切ると、建物の外には開場待ちと思(おぼ)しき若い男女が何人も屯(たむろ)していた。仲間同士で会話したり、俯(うつむ)いてスマートフォンに目を落としたりと思い思いの時間潰(つぶ)しをしている彼等を横目に、叶はバンデン・プラを停めた大型デパートへ戻り、上階のレストランコーナーに足を運んだ。まだ夕には早かったが、さすがにライヴ終了まで路上に立っている訳にも行かないので、小腹満(こばらみ)たしと時間潰しを兼ねてドリンクバーが設置されているレストランを選んで入った。昼過ぎにも関わらず、店内にはそこそこの人数の来客が見て取れた。 出迎えたウェイトレスの案内で奥の二人掛けの席に通された叶は、壁を背にして着席するとメニューを開きつつスマートフォンを取り出して、改めてライヴの開始時間をチェックした。『HAGANE』のホームページによれば、午後五時三十分開始らしい。ライヴ

    ひとちがい #10 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/06/01
    ライヴハウスって大抵地下に在るけど、往々にして階段が狭い印象。まぁ仕方無いんだろうけど。
  • ひとちがい #9 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    カレーライスを完し、付け合わせのコーヒーを堪能(たんのう)した叶は、奥のキッチンに向けて礼を述べながらカウンターに勘定(かんじょう)を置き、スマートフォンを掴(つか)んで『喫茶 カメリア』を出て月極(つきぎめ)駐車場へ向かった。その道すがら、叶は先程見つけた『狩野リョウ』と言う名のギタリストについて考えた。 優美子と交際していた狩野リョウは左利きで右手の指先が硬い、だがSNS等の狩野リョウは右利き、ふたりが別人なのは明らかだが、いくら同姓同名でも名前の表記まで全く同じなのはさすがに奇妙だ。 ふたりの狩野リョウの間には何らかの関係があるのではないかと踏んだ叶は、駐車場に停めたバンデン・プラに乗り込むと改めて『狩野リョウ』の検索をかけ、活動スケジュールを調べた。すると、右利きの狩野リョウは現在『RANKO』と言う女性ミュージシャンのバックバンドに参加しているらしく、今夜は七時半から隣県(りん

    ひとちがい #9 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/25
    今回出て来たビリーのモデル、すぐ判るよな。
  • ひとちがい #8 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    翌朝、叶は頭を襲う鈍(にぶ)い痛みと共に目を覚ました。普段殆(ほとん)ど飲まない酒を、決して少なくは無い量を飲んだ所為で宿(ふつか)酔いになっていた。 アミリ達と別れた後にタクシーを拾って事務所に戻り、着の身着のままでベッドに倒れ込んだ為、ジャケットもスラックスも皺(しわ)が着いている。自業自得(じごうじとく)とは思いながらも、叶は舌打ちしつつ服を着替えてプライベートスペースを出て、給湯室(きゅうとうしつ)に入って棚(たな)の中からシェーバーを出して髭(ひげ)を剃(そ)り、ついでに冷蔵庫から水のペットボトルを取り出してその場でラッパ飲みした。頭を上げた拍子に後頭部を鈍痛(どんつう)が襲い、顔を顰(しか)めながら水をしまって給湯室を出た。 壁の時計を見上げると、既に午前十一時を過ぎていた。叶は欠伸(あくび)しながらプライベートスペースに戻り、脱いだジャケットのポケットから財布とスマートフォン

    ひとちがい #8 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/18
    本格的な宿酔いって一度だけなった事あるけど、あれキツいよね。
  • ひとちがい #7 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    「ちょっと栞菜、声が大きいよ」 興奮気味のアミリを窘(たしな)めてから、優美子が叶に向き直って話し始めた。 「あの、その人とは、半年くらい前に婚活(こんかつ)アプリを通じて知り合って、それから、何度か事に行ったりして、仲良くなったんです」 「婚活、て事は結婚を前提に付き合ってた?」 「いえ、その、最初は私、婚活アプリなんて使う気無かったんです、でも」 一旦言葉を切った優美子が横目でアミリを見ると、呼応したアミリが口を開いた。 「あたしがやらせたの。優美子は奥手で、好きな男ができても告る勇気が出なくて結局他の女にさらわれたりするから、何かじれったくて」 優美子が恥ずかしそうに身を縮めるのを一瞥(いちべつ)してから、叶はアミリに尋ねた。 「そう言う君は、婚活アプリやってんの?」 「いや」 即座に否定したアミリが、スパゲティを頬張(ほおば)ってから続けた。 「あたしは店で散々男と喋って飲んでる

    ひとちがい #7 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/11
    婚活アプリ、使った事無いから調べるの苦労した。
  • ひとちがい #6 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    アミリは困惑する叶を無視して立ち上がり、小走りに寄って来た優美子を出迎えた。 「ごめ〜ん優美子、こんな時間に呼び出しちゃって」 合掌(がっしょう)して謝(あやま)るアミリを、優美子は優しく宥(なだ)めた。 「ううん、大丈夫。こちらこそごめんね」 叶は明後日(あさって)の方向に首を向けて、ふたりのやり取りを聞き流しながら水を飲んでいた。すると、アミリがあからさまな敵意を込めた口調で言った。 「それより、電話でも言ったけど見つけたよ、あんたを騙(だま)したカノウって最低野郎をね!」 「当、に?」 半信半疑(はんしんはんぎ)な声音(こわね)の優美子を余所(よそ)に、アミリは自信満々に告げた。 「当だって、あんたが言ってた特徴(とくちょう)、背は百八十無いくらいの痩(や)せ型、シングルのスーツを着ててちょっと格好良いって言うか気取ってる感じ、もうピッタリ! それに店で『カノウ』って名乗ったんだ

    ひとちがい #6 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/05/04
    今のファミレスって、コーヒーお代わり自由なの(富士そばばっかり行ってるから判らん)?
  • ひとちがい #5 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    叶は何とか脱出を試(こころ)みるが、右腕を背中で折り畳(たた)まれている上に手首を捻(ね)じられているので、無理に力を入れて振りほどこうとすれば最悪肩が外れるか肘が折れる危険性があった。一方のアミリは、スマートフォンを耳に当てながらも叶の抵抗(ていこう)を封(ふう)じる為(ため)に爪先(つまさき)で叶の右膝裏を蹴り、地面に膝を着かせた。その拍子(ひょうし)に極められた右腕が更(さら)に深く曲がり、叶は苦痛に顔を歪(ゆが)めた。 「クソ、タダモンじゃないな、この娘」 左手を右肩に当てつつ負け惜(お)しみを呟(つぶや)く叶の後ろで、アミリが喋(しゃべ)り始めた。 「あ、もしもし優美子(ゆみこ)? あたし。ごめんねこんな時間に、それよりさ、あんたが探してたカノウって男、見つけたよ!」 スマートフォンのスピーカーから漏(も)れる、若い女性の『嘘(うそ)!?』と言う甲高(かんだか)い声が叶の耳にも入

    ひとちがい #5 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/04/27
    栞菜(カンナ)と優美子と言う名前で元ネタが判った人、居る?
  • ひとちがい #4 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    「ええ、居るけど、どうして?」 莉杏に戸惑いを滲(にじ)ませた笑顔で訊き返された叶は、最後の「どうして?」が何故アミリを知っているのかと言うニュアンスだと勝手に解釈して答えた。 「あ、ああ、ここを紹介してくれた人から聞いたんだ、良い娘だったってね」 「そう」 如何にも当たり障(さわ)りの無い返答に、莉杏は関心を無くしたのか叶から顔を背(そむ)けた。そこへ、叶を先導した男性とは別の男性店員が歩み寄り、跪(ひざまず)いて莉杏に告げた。 「莉杏さん、御指名です」 「あ、は〜い」 声のトーンを上げて返事した莉杏が、立ち上がりざま叶を見下ろして言った。 「じゃ、失礼しま〜す、あ、代わりにアミリちゃんを呼んでおきますね」 「ありがとう」 叶がグラスを持ち上げつつ礼を述べると、莉杏は笑顔で軽く会釈して指名客の待つボックス席へ向かった。残った春奈に水割りのお代わりを作ってもらっていると、叶達のボックス席に

    ひとちがい #4 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/04/20
    最近こちらをやってなかったのは、ログイン期限が過ぎてたらしいから。
  • ひとちがい #1 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    狭く、薄暗い室内で、叶友也(かのうともや)は落ち着かない様子でパイプ椅子(いす)に腰掛けていた。 周囲の壁は薄い灰色で、白色の蛍光灯の光を受けても尚、陰気さを漂わせている。叶から見て右側に小さな窓が嵌(はま)っているが、曇天(どんてん)の空から陽光は提供されておらず、陰気さを払拭(ふっしょく)するどころか寧(むし)ろ助長していた。何となく息苦しさを覚えた叶は、ネクタイの結び目に指を掛けて緩め、深い溜息を吐(つ)いた。 部屋は中央で半分に仕切られ、座っている叶の胸の辺りにカウンターの様に天板が突き出ていて、その上に透明な遮蔽(しゃへい)板が嵌(は)め込まれている。遮蔽板の中央には同心円状に小さな穴が穿(うが)たれているが、部屋の陰気さがもたらす閉塞(へいそく)感の助けにはなっていない。 東京拘置所(こうちしょ)。 刑事裁判の被告人(ひこくにん)や死刑囚等が主に入れられる施設で、叶が居るのは、

    ひとちがい #1 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/03/29
    ネタ自体は大分前からあったが、最近やっと具現化のメドがついた。
  • SUMMER FALL #14 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    覆面パトカーを警察病院の前に乗り付けた甲山は、手術を終えた蓑部が運び込まれた病室に入った。広めの個室の奥に鎮座(ちんざ)するベッドに、腹部を分厚い包帯で固定された蓑部が横たわり、その傍(かたわ)らに草加と仲町が立っていた。甲山はふたりに目配せしてから蓑部に近寄った。仲町が小声で告げる。 「医者から五分だけって言われてます」 甲山が無言で頷くと、仲町は軽く会釈して病室を出た。その背中を見送ってから、甲山は草加が側から出して来たパイプ椅子に座り、努(つと)めて穏(おだ)やかな口調で蓑部に話しかけた。 「何で、あんな無茶したんだ?」 蓑部は生気の薄い目で甲山を見ると、溜息混じりに答えた。 「もう、生きてても仕方ないと思って」 「やっぱり、あの時吉成にわざと刺させるつもりだった?」 後ろから草加が訊いた。蓑部はゆっくり頷いて続ける。 「七年前に、親父もお袋も立て続けに亡くなって、俺の肉親は祥子だけ

    SUMMER FALL #14 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/18
    おしまい!
  • SUMMER FALL #13 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    ヘッドスライディングの要領で前方に飛び込みながら発砲し、地面に腹這(はらば)いになって顔に砂粒を付着させた甲山が上げた視線の先で、蓑部の身体が膝から崩れ落ち、草加が駆け寄って抱き止めた。その向こう側で、スラックスの右腿を朱(あけ)に染めた吉成が横倒しになって苦悶(くもん)していた。甲山の撃った銃弾が貫通(かんつう)したのだ。 「平井! 吉成を確保! それと救急車!」 甲山は跳ね起きながら大声で平井に指示を飛ばすと、チーフスペシャルをホルスターに納めて蓑部に駆け寄った。 「蓑部! しっかりしろ!」 草加が声をかけながら支えている蓑部の正面に回った甲山の目が、驚愕(きょうがく)で大きく見開かれた。 蓑部の腹部、正中線より左側に吉成が突き出した包丁が半分程刺さっていた。着ているTシャツが鮮血を吸って色を変えていた。 「オイ! 蓑部!」 甲山が顔を近づけてがなると、蓑部は空(うつ)ろな目で甲山を見

    SUMMER FALL #13 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/18
    本当は今回で終わらせるつもりだったが、長くなるのでわけた。
  • SUMMER FALL #12 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    「コーさん! 何があったんスか!?」 草加の問いに、甲山は忙しなくハンドルを操作しながら答えた。 「吉成は包丁を買ってひとりでタクシーに乗った! 室長に緊配頼んだ!」 「包丁?! まさか、誰か殺そうってんじゃ」 「ひとりもんの男が包丁だけ買うなんてのは、それぐらいしか理由ねぇだろ」 吐き捨てる様に言った甲山が、アクセルを踏み込んだ。 数分後、覆面パトカー内の無線が鳴った。草加がマイクを取って応じると、スピーカーから目黒の声が響いた。 『目黒だ。当該タクシーを棚川署管内で発見、現在地域課のパトカーが追跡中』 「了解」 草加が戻しかけたマイクを、甲山がひったくってがなった。 「室長! 追跡してる奴等に、吉成がタクシーを降りてもばんかけるなって言ってください! 奴の行き先には蓑部が居る筈です!」 『判った』 「ちょっと待った、何で蓑部なんスか?」 通信を終えた甲山に、草加が訝しげな顔で訊いた。

    SUMMER FALL #12 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/17
    改めて、刑事物って難しいと思う。
  • SUMMER FALL #11 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    仲町が近くのコンビニエンスストアで購入した事を腹に収めると、甲山達は再び二手に分かれた。鴨居と仲町が覆面パトカーを降り、甲山と草加は『ガーネットプロダクション』が入るオフィスビル周辺に戻って吉成が出て来るのを待った。 午後八時を過ぎた頃に、ビルの前に黒塗りのメルセデスが停車した。その数分後、吉成と堀池が並んで出て来た。 「来た」 甲山は鋭く言って身を屈め、ハンドルに突っ伏して微睡(まどろ)んでいた草加の肩を掴んで引っ張った。 「うぉっ」 突然安眠を妨害された草加の口を塞ぐと、甲山はゆっくり頭を上げて吉成と堀池がメルセデスの後部座席に身体を滑り込ませるのを確認して草加の肩を離した。 「あの車だ」 甲山が指を差して指示し、寝ぼけつつ「あ、ウッス」と頷いた草加がエンジンをスタートさせた。 吉成達が乗ったメルセデスは、十数分程走って大通り沿いに在(あ)るホームセンターの駐車場に入った。草加は店の

    SUMMER FALL #11 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/11
    ここの所落ち着かなくて(肉体的にも精神的にも)。やっと書く気になった。