覆面パトカーを警察病院の前に乗り付けた甲山は、手術を終えた蓑部が運び込まれた病室に入った。広めの個室の奥に鎮座(ちんざ)するベッドに、腹部を分厚い包帯で固定された蓑部が横たわり、その傍(かたわ)らに草加と仲町が立っていた。甲山はふたりに目配せしてから蓑部に近寄った。仲町が小声で告げる。 「医者から五分だけって言われてます」 甲山が無言で頷くと、仲町は軽く会釈して病室を出た。その背中を見送ってから、甲山は草加が側から出して来たパイプ椅子に座り、努(つと)めて穏(おだ)やかな口調で蓑部に話しかけた。 「何で、あんな無茶したんだ?」 蓑部は生気の薄い目で甲山を見ると、溜息混じりに答えた。 「もう、生きてても仕方ないと思って」 「やっぱり、あの時吉成にわざと刺させるつもりだった?」 後ろから草加が訊いた。蓑部はゆっくり頷いて続ける。 「七年前に、親父もお袋も立て続けに亡くなって、俺の肉親は祥子だけ