嶋野は目の前に突きつけられた銃口に対して眉ひとつ動かさず、組んでいた右脚を素早く跳ね上げて土橋の右手首を蹴りつけた。 「ぎゃっ」 痰が絡んだ様な悲鳴を上げて、土橋が拳銃を取り落とした。嶋野は上げた右脚の踵で開放されていたアタッシュケースを閉めると、ソファから腰を上げて拳銃を拾った。撃鉄が起こされていない事を確認して鼻を鳴らすと、右手を押さえて苦悶の表情を浮かべる土橋のこめかみに銃口を押し当てた。途端に土橋が息を飲む。 「ひぃっ」 「素人が扱うな」 低い声で警告するなり、嶋野は銃の撃鉄を起こした。シリンダーの回る音に、土橋の顔が引きつった。 「はぁっ、た、た、助けて」 唇を震わせて命乞いをする土橋を冷ややかに見つめると、嶋野は銃口を土橋に向けたまま対面のソファに戻って告げた。 「行け。帰ったら先生に伝えろ、しくじりましたってな」 土橋は顔の三分の一程を占める程大きく目を見開いて嶋野を見返しな
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