嶋野は顔を覆っていた不織布マスクをむしり取ってジャケットのポケットへ突っ込むと、煙草を咥えて火を点けた。 「そう言えば、あの土橋ってオッサン、放っといていいんですか?」 ハンドルを握りながら質問する菅原に、嶋野は主流煙を撒き散らしつつ答えた。 「下手にサツに喋ったら自分の身も危ないって事くらい判るだろ」 「ま〜それ以前に契約違反なんで俺等でシメますけどね〜」 半ばおどけた調子で話す菅原を尻目に、嶋野は腰からガバメントを取り出すと銃把の中からマガジンを抜き、残っていた六発の弾丸を全て出して再び銃把に納めた。弾丸をスラックスのポケットに入れると、ガバメントを菅原へ突き出した。 「ダッシュボードに入れろ」 「ウッス」 頷いた菅原が、前を向いたまま左手でガバメントを受け取り、ダッシュボードにしまった。 煙草を吸い終えた嶋野は、スマートフォンを取り出して電話をかけ始めた。相手は高松だった。 『もしも
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