狭く、薄暗い室内で、叶友也(かのうともや)は落ち着かない様子でパイプ椅子(いす)に腰掛けていた。 周囲の壁は薄い灰色で、白色の蛍光灯の光を受けても尚、陰気さを漂わせている。叶から見て右側に小さな窓が嵌(はま)っているが、曇天(どんてん)の空から陽光は提供されておらず、陰気さを払拭(ふっしょく)するどころか寧(むし)ろ助長していた。何となく息苦しさを覚えた叶は、ネクタイの結び目に指を掛けて緩め、深い溜息を吐(つ)いた。 部屋は中央で半分に仕切られ、座っている叶の胸の辺りにカウンターの様に天板が突き出ていて、その上に透明な遮蔽(しゃへい)板が嵌(は)め込まれている。遮蔽板の中央には同心円状に小さな穴が穿(うが)たれているが、部屋の陰気さがもたらす閉塞(へいそく)感の助けにはなっていない。 東京拘置所(こうちしょ)。 刑事裁判の被告人(ひこくにん)や死刑囚等が主に入れられる施設で、叶が居るのは、