ブックマーク / kakuyomu.jp (137)

  • ひとちがい #1 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    狭く、薄暗い室内で、叶友也(かのうともや)は落ち着かない様子でパイプ椅子(いす)に腰掛けていた。 周囲の壁は薄い灰色で、白色の蛍光灯の光を受けても尚、陰気さを漂わせている。叶から見て右側に小さな窓が嵌(はま)っているが、曇天(どんてん)の空から陽光は提供されておらず、陰気さを払拭(ふっしょく)するどころか寧(むし)ろ助長していた。何となく息苦しさを覚えた叶は、ネクタイの結び目に指を掛けて緩め、深い溜息を吐(つ)いた。 部屋は中央で半分に仕切られ、座っている叶の胸の辺りにカウンターの様に天板が突き出ていて、その上に透明な遮蔽(しゃへい)板が嵌(は)め込まれている。遮蔽板の中央には同心円状に小さな穴が穿(うが)たれているが、部屋の陰気さがもたらす閉塞(へいそく)感の助けにはなっていない。 東京拘置所(こうちしょ)。 刑事裁判の被告人(ひこくにん)や死刑囚等が主に入れられる施設で、叶が居るのは、

    ひとちがい #1 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2024/03/29
    ネタ自体は大分前からあったが、最近やっと具現化のメドがついた。
  • SUMMER FALL #14 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    覆面パトカーを警察病院の前に乗り付けた甲山は、手術を終えた蓑部が運び込まれた病室に入った。広めの個室の奥に鎮座(ちんざ)するベッドに、腹部を分厚い包帯で固定された蓑部が横たわり、その傍(かたわ)らに草加と仲町が立っていた。甲山はふたりに目配せしてから蓑部に近寄った。仲町が小声で告げる。 「医者から五分だけって言われてます」 甲山が無言で頷くと、仲町は軽く会釈して病室を出た。その背中を見送ってから、甲山は草加が側から出して来たパイプ椅子に座り、努(つと)めて穏(おだ)やかな口調で蓑部に話しかけた。 「何で、あんな無茶したんだ?」 蓑部は生気の薄い目で甲山を見ると、溜息混じりに答えた。 「もう、生きてても仕方ないと思って」 「やっぱり、あの時吉成にわざと刺させるつもりだった?」 後ろから草加が訊いた。蓑部はゆっくり頷いて続ける。 「七年前に、親父もお袋も立て続けに亡くなって、俺の肉親は祥子だけ

    SUMMER FALL #14 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/18
    おしまい!
  • SUMMER FALL #13 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    ヘッドスライディングの要領で前方に飛び込みながら発砲し、地面に腹這(はらば)いになって顔に砂粒を付着させた甲山が上げた視線の先で、蓑部の身体が膝から崩れ落ち、草加が駆け寄って抱き止めた。その向こう側で、スラックスの右腿を朱(あけ)に染めた吉成が横倒しになって苦悶(くもん)していた。甲山の撃った銃弾が貫通(かんつう)したのだ。 「平井! 吉成を確保! それと救急車!」 甲山は跳ね起きながら大声で平井に指示を飛ばすと、チーフスペシャルをホルスターに納めて蓑部に駆け寄った。 「蓑部! しっかりしろ!」 草加が声をかけながら支えている蓑部の正面に回った甲山の目が、驚愕(きょうがく)で大きく見開かれた。 蓑部の腹部、正中線より左側に吉成が突き出した包丁が半分程刺さっていた。着ているTシャツが鮮血を吸って色を変えていた。 「オイ! 蓑部!」 甲山が顔を近づけてがなると、蓑部は空(うつ)ろな目で甲山を見

    SUMMER FALL #13 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/18
    本当は今回で終わらせるつもりだったが、長くなるのでわけた。
  • SUMMER FALL #12 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    「コーさん! 何があったんスか!?」 草加の問いに、甲山は忙しなくハンドルを操作しながら答えた。 「吉成は包丁を買ってひとりでタクシーに乗った! 室長に緊配頼んだ!」 「包丁?! まさか、誰か殺そうってんじゃ」 「ひとりもんの男が包丁だけ買うなんてのは、それぐらいしか理由ねぇだろ」 吐き捨てる様に言った甲山が、アクセルを踏み込んだ。 数分後、覆面パトカー内の無線が鳴った。草加がマイクを取って応じると、スピーカーから目黒の声が響いた。 『目黒だ。当該タクシーを棚川署管内で発見、現在地域課のパトカーが追跡中』 「了解」 草加が戻しかけたマイクを、甲山がひったくってがなった。 「室長! 追跡してる奴等に、吉成がタクシーを降りてもばんかけるなって言ってください! 奴の行き先には蓑部が居る筈です!」 『判った』 「ちょっと待った、何で蓑部なんスか?」 通信を終えた甲山に、草加が訝しげな顔で訊いた。

    SUMMER FALL #12 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/17
    改めて、刑事物って難しいと思う。
  • SUMMER FALL #11 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    仲町が近くのコンビニエンスストアで購入した事を腹に収めると、甲山達は再び二手に分かれた。鴨居と仲町が覆面パトカーを降り、甲山と草加は『ガーネットプロダクション』が入るオフィスビル周辺に戻って吉成が出て来るのを待った。 午後八時を過ぎた頃に、ビルの前に黒塗りのメルセデスが停車した。その数分後、吉成と堀池が並んで出て来た。 「来た」 甲山は鋭く言って身を屈め、ハンドルに突っ伏して微睡(まどろ)んでいた草加の肩を掴んで引っ張った。 「うぉっ」 突然安眠を妨害された草加の口を塞ぐと、甲山はゆっくり頭を上げて吉成と堀池がメルセデスの後部座席に身体を滑り込ませるのを確認して草加の肩を離した。 「あの車だ」 甲山が指を差して指示し、寝ぼけつつ「あ、ウッス」と頷いた草加がエンジンをスタートさせた。 吉成達が乗ったメルセデスは、十数分程走って大通り沿いに在(あ)るホームセンターの駐車場に入った。草加は店の

    SUMMER FALL #11 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/09/11
    ここの所落ち着かなくて(肉体的にも精神的にも)。やっと書く気になった。
  • SUMMER FALL #10 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    東部署を離れた甲山と草加は、蓑部の行方を追っていた鴨居と仲町に合流した。覆面パトカーの後部座席に乗り込んだふたりに、甲山が訊いた。 「どうだ?」 「いや〜全然ダメッス。手掛かり無しです」 鴨居の返答に続いて、仲町がボヤき気味に言った。 「付近での目撃証言も得られませんでした、タクシーでも拾ったんじゃないですか?」 「有り得る」 草加が受けた隣で、甲山は思案顔で煙草に火を点けた。 「どうします、甲山さん?」 鴨居の問いに、甲山はたっぷりと主流煙を吐き出してから答えた。 「蓑部の目的が吉成だって事はハッキリしてる、だが何で半年も時間をかけてるのかが判らん。その間にあのキャバクラの女に近づいた理由もな」 「つまり、その辺の動機が見えないとどうしょうも無いと」 草加のフォローに頷いてから数秒置いて、甲山が何かを思いついた様に再び口を開いた。 「妹の遺書に、確か身体を売らされたとか書いてあったな?」

    SUMMER FALL #10 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/08/28
    腹が減っては捜査はできぬ、ってね。
  • SUMMER FALL #9 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    蓑部を見失った甲山と草加は、『神庭荘』に戻って改めて話を聞いた。どうやら蓑部は、祥子が自殺して葬儀(そうぎ)を済ませた後も供養(くよう)だ何だと理由をつけて部屋を引き払う事を拒否していたらしい。だがさすがに蓑部が妹の部屋に住み着いていたのは管理人も気づかなかった様だ。 「蓑部の奴、上手くやってやがったな」 管理人の部屋を出た甲山が言うと、草加が頷いて返した。 「人目のつかない時間に出入りしてたんでしょうね。案外、上京してからの宿泊費用が底をついたのかも知れませんけどね」 「ともかく、妹の部屋を調べよう」 ふたりは白手袋を嵌(は)めて、再び祥子の部屋へ足を踏み入れた。甲山が左手の押入れを開け、草加が奥に設置された化粧台を探る。押入れの上段には祥子の衣類を納めた引き出しボックスがしまわれていて、その上に差し渡された突っ張り棒から、冬物の上着やフォーマルスーツ、色鮮やかなドレス等がぶら下がってい

    SUMMER FALL #9 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/08/21
    久々。事件の暗部を書くのは若干きついね。
  • SUMMER FALL #8 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    堀池を伴(ともな)ってオフィスに入った甲山と草加は、件の女性のデータを入手した。名前は蓑部祥子(しょうこ)、年齢は十八歳と記載されていた。住所は都内だが、管轄(かんかつ)外だった。ふたりが堀池に礼を述べて覆面パトカーに戻ると、時刻は午後九時を過ぎていた。 「取り敢えず署に戻るか。後は明日だ」 「そうッスね」 翌朝、再び刑事課分室の面々がホワイトボードの前に集った。皆一様に眠そうな顔をしている。 「例の男の身許が割れたって?」 目黒が口火を切り、頷いた甲山が自分のデスクから言った。 「ええ、ほぼ確実に。名前は蓑部達範、高知県にある虎杖精工って会社の社員ですな。ま、その会社に照会する必要ありますがね」 言葉尻をついて、隣のデスクから草加が発言した。 「この蓑部君が、あの吉成って社長の所にカチ込んだそうで、社長秘書によれば何でも、こいつの妹が自殺したとか」 「自殺ッスか?」 ホワイトボードの脇に

    SUMMER FALL #8 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/08/14
    今回、前半は有明、と言うか夏コミ会場の中で書いてた。
  • SUMMER FALL #7 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    堀池が証言した吉成のアリバイは完璧だった。甲山と草加は残った名刺の持ち主を当たったが、皆カレンこと田辺美和の死に対して驚くものの、吉成程の反応は見せなかった。また殆(ほとん)どの人にアリバイがあり、彼女に殺意を抱くまでの動機も無い様だった。 結果、美和の得意客に容疑者候補は見当たらなかった。一枚の名刺を残して。 覆面パトカーの車内で、草加が残った名刺を見ながら電話をかけているのを、甲山は煙草を吸いながら横目で眺(なが)めていた。 「ウ〜ン、やっぱり繋(つな)がんねぇなぁ」 難しい顔で電話を切る草加に、甲山が訊いた。 「人の携帯か?」 「ええ、これで五回目なんスけど」 答える草加の手から名刺を取り上げた甲山は、裏側に書かれた携帯電話番号を見てから、表に返した。名前は蓑部達範(みのべたつのり)、所属は『(株)虎杖精工(いたどりせいこう)』と書かれていた。だが甲山はその会社の住所を見て瞠目(ど

    SUMMER FALL #7 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/08/12
    また間が空いてしまった。刑事ものは手順が大事。
  • SUMMER FALL #6 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    「大丈夫ですか?」 堀池が慌てて駆け寄り、吉成の足の間で砕(くだ)け散(ち)ったコーヒーカップを処理し始めるのを、甲山と草加は驚きと共に眺(なが)めた。吉成に目を転じると、その双眸(そうぼう)は大きく見開かれ、視線は宙を彷徨(さまよ)っていた。 「吉成さん?」 甲山が問いかけるが、全く反応が無い。片付けを終えて戻って来た堀池が、社長の異変に気付いて再び側に寄り、「社長? どうしました?」と訊き、やっと吉成は我に返った。甲山が口を開くより早く、吉成が身を乗り出して尋ねた。 「どうして、どうして美和は死んだんですか!?」 異常なまでのいつきに戸惑いながらも、甲山は答えた。 「今の所、事故か他殺かはハッキリしてませんな」 「そ、そうですか」 うなだれる吉成に、草加が質問した。 「彼女、誰かと揉めてたとか、誰かに恨まれるとか、心当たりありませんかね?」 「え、あ、いや、そう言う事は、判りません。

    SUMMER FALL #6 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/07/30
    やっと更新。島津と椎名のやり取りは楽しい。
  • SUMMER FALL #5 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    翌朝、刑事課分室の面々が再びホワイトボードの前に集合した。捜査会議の口火を切ったのは甲山だった。 「マル害は店のナンバーワンで、かなりの上客を掴んでたらしい。その中でも、モデル事務所社長の吉成ってのと半ば交際してたそうだ」 「で、マル害のヤサに侵入した男が、ここ半年くらい足繁(あししげ)く『Red Rose』に来てマル害を指名してたと」 草加が補足すると、目黒が自分のデスクから言った。 「と言う事は、交際を巡(めぐ)ってマル害とその男が揉めて、橋から突き落とした、のか?」 「痴情(ちじょう)のもつれ、って奴じゃないスか?」 鴨居が言い、仲町も同調する様に頷く。そこに、草加が反論した。 「だったら、わざわざカードキーをくすねてまで女のヤサ荒らす必要無いんじゃないの? 探し方がド派手だったんだぜ?」 「それは、何か弱みでも握られてたんじゃないスか?」 鴨居が言い返すと、草加も唸(うな)って考え

    SUMMER FALL #5 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/07/24
    またも唐突に更新。
  • SUMMER FALL #4 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    覆面パトカーで『Red Rose』近くに路上駐車した草加が、助手席の窓を半分開けて喫煙中の甲山に話しかけた。 「コーさん、まさか真面目に聞き込みかけたりしないッスよね?」 「どう言う意味だ?」 甲山が主流煙と共に訊き返すと、草加が腕時計を示しながら答えた。時刻は午後八時近かった。 「こんな時間ッスよ〜? 店がこれから盛り上がるって時に俺等が『警察で〜す』って乗り込んでったら、お姉ちゃん達引いちゃって喋ってくれなくなっちゃうかも知れませんよ?」 甲山は半ば呆れ顔で煙草を消し、ジーンズのポケットをまさぐりながら言った。 「判った判った、ちょっと待ってろ」 ポケットから出した小銭入れから、甲山は百円硬貨(こうか)を一枚取り出して草加に示した。 「これで決めるか」 「いいッスよ、当てた方がお客ね」 草加が答え終えるや否や、甲山が百円硬貨を親指で跳ね上げた。回転しつつ宙を舞う硬貨を左手でキャッチし、

    SUMMER FALL #4 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/07/10
    えらい長くなっちまった。まぁこういう店での喋りですから(どんな理屈?)。
  • SUMMER FALL #3 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    鑑識による現場検証が終わったのは、陽も傾きかけた午後六時過ぎだった。甲山と草加は地域課の黒パトに相乗りして分署に戻った。だが正面玄関からは入らず、駐車スペースを回って裏へ行き、自販機で缶コーヒーを買いつつ近くに立てられたスモークスタンドを囲んで一服した。空へ向けて主流煙を吐き出してから、草加がボヤいた。 「しかしまぁ、面倒臭くなりましたね」 「全くだ」 甲山も苦笑して応じる。 以前は、署の監視の目が行き届かないのを良い事に室内で煙草を吸っていたのだが、新たに赴任(ふにん)した島津光彦(しまづみつひこ)分署長が健康増進法を盾(たて)に室内の灰皿を全て処分してしまった。その代わりに、署で使わなくなったスモークスタンドを引き取ってここに設置した。 たっぷり十分近くかけて紫煙(しえん)を撒(ま)き散らして、ふたりは裏口から刑事課分室に戻った。中では既にホワイトボードが準備されていて、仲町が出来

    SUMMER FALL #3 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/06/25
    ちょっと文字数多くなった。まぁ喋り主体なんで。
  • SUMMER FALL #2 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    西村から聞いた住所を頼りに、甲山と草加は徒歩で田辺美和の自宅へ向かった。だが、辿(たど)り着いた途端(とたん)にふたりは途方に暮れる羽目に陥(おちい)った。 該当(がいとう)する住所に在(あ)ったのは、八階建ての高級マンションで、正面玄関にはテンキーや小型モニター等が嵌(はま)ったパネルがふたりを通せんぼする様に屹立(きつりつ)していた。よく見ると、モニターの脇にカードを当てるタッチパネルが付いている。 「うわ〜、面倒臭い奴だよ」 草加のボヤきをスルーした甲山は、西村に電話をかけて遺留品の中にカードキーらしき物が無いかを確かめさせた。程なく、それらしき物は見当たらないとの返答を受けると、電話を切って草加に言った。 「管理会社に連絡して開けて貰おう」 「了解」 たっぷり二十分近く待たされて、ふたりは漸(ようや)くマンションの中に足を踏み入れた。事情を知った管理会社の担当者は顔を引きつらせなが

    SUMMER FALL #2 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/06/20
    お久しぶり。最近の高級マンション事情に疎くて。
  • SUMMER FALL #1 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム

    東京と隣県(りんけん)を分かつ一級河川(いっきゅうかせん)『太那川(たながわ)』を横断(おうだん)する『五木橋(いつきばし)』を見上げる河川敷(かせんじき)の砂利(じゃり)の上に、薄手のワンピースを着た若い女性が横たわっていた。その両目は大きく見開かれ、二度と閉じる事は無い。 その女性の傍(かたわ)らを、大柄な男性がクリップボードを片手に何やら喋(しゃべ)りながら動き回り、更にその周囲を『鑑識(かんしき)』と書かれた腕章を着けた、青い制服姿の男性が数人蠢(うごめ)いている。そこから少し離れた所で、白Tシャツにジーンズ姿で口髭(ひげ)を生やした男性と、濃紺(のうこん)のネルシャツに革パンツの男性が顔を突き合わせていた。 「飛び降りって事は、無いッスかね〜コーさん?」 草加正則(くさかまさのり)は、ネルシャツの襟(えり)を摘(つま)んではためかせながら、橋を見上げて言った。 「自殺なら、もっと

    SUMMER FALL #1 - リバーサイドコップ(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/06/12
    お久しブリーフ。何でこんなに間が空いたかって? まぁネタに困ったのもあるが、実はサブタイトルが思いつかなかった。
  • ブラッド・ライン #26 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    演奏が終わり、いのりが頭を下げた直後、またも万雷の拍手が店内に響いた。玲奈が駆け寄って、満面の笑みで告げた。 「凄いねいのりさん! 尊敬(そんけい)しちゃう」 「玲奈ちゃん、ありがとう」 礼を言ったいのりは、贈られたフルートを愛おしげに見つめた。その様子を見ながら、叶は瑠璃香に言った。 「やっぱり、マサ・ダンダはいのりちゃんのお母さんの事が気で好きだったんだな」 「そう、ですね」 瑠璃香は目を潤(うる)ませながら同意した。 誕生日パーティーが終わり、『WINDY』には叶と玲奈、いのり、瑠璃香、風間が残った。 「俺の事は気にしなさんな。何か話があるんならごゆっくり」 瑠璃香に告げると、風間は皆が使い終えた器等を片付け始めた。叶が手伝おうとすると、風間が手を出して制した。 「お前さんは、彼女の側(そば)に居てやんな」 風間の指し示す先に居るいのりを見た叶は、申し訳無さそうに頷いた。代わりに

    ブラッド・ライン #26 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/02/26
    変に引っ張ったみたいになったが、これで終了。
  • ブラッド・ライン #25 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    叶が扉をそっと開けると、瑠璃香は狼狽して俯きながら小声で挨拶した。 「あ、こんばんは」 「入んなよ、玲奈に呼ばれたんだろ?」 「え、ええ、それに、皆口さんにお話があって」 叶の問いに対して、瑠璃香の歯切れは悪かった。不審に思った叶が更に訊く。 「だったら、こんな所に居ないで入ればいいだろ? 遠慮するなって」 しかし、瑠璃香は出入口から動こうとせずに返す。 「私の祝福なんて、皆口さんは喜ばないわ、きっと」 「そんな事無いさ。第一、君が拉致されたと知った時、いのりちゃんは自分が行くって言い出しだんだぜ? まぁ半分自棄(やけ)になってたけどな」 叶の暴露(ばくろ)に、瑠璃香は目を見開いた。 「当に?」 「ああ、アンタの事が当に嫌いだったら言わないだろ、そんな事。さぁ、玲奈も待ってるから、入ってくれ」 叶が促すと、瑠璃香はやっと店内へ足を踏み入れた。目ざとく見つけた玲奈が、笑顔で駆け寄った。

    ブラッド・ライン #25 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/02/25
    パーティーは続く。
  • ブラッド・ライン #24 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    搬送先の病院で左肩の縫合(ほうごう)を受けた叶は、そのままひと晩入院する羽目に陥(おちい)った。久しぶりに三角巾(さんかくきん)で左腕を吊った叶は、充(あ)てがわれた病室のベッドに腰を下ろすと、周囲に気を遣(つか)いながらスマートフォンを取り出した。メッセージアプリの通知が来ていたので開くと、玲奈からのメッセージが表示された。 『家帰った ケーサツに色々きかれてなえた』 『弁護士さんに送ってもらった』 『なんかハイエナが文句言ってたよ よくわかんないけど』 『アニキの車 ケーサツにあるって』 『いのりさんも心配してたよ』 叶は苦笑してスマートフォンをしまい、ベッドに横たわった。 翌日、叶は病室で警察の事情聴取を受けた。その場に瑠璃香が立ち会い、叶をフォローした。 警察が病室を出たのを見送ってから、瑠璃香が叶に深々と頭を下げた。 「ごめんなさい。私の所為で迷惑かけて、怪我までさせてしまって」

    ブラッド・ライン #24 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/02/24
    何か、西条と瑠璃香のやり合い書いてて面白くなっちゃって。
  • ブラッド・ライン #23 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    左肩の傷を確認する叶に、西条が歩み寄った。 「大丈夫かともちん?」 「ああ、かすり傷だ」 叶が嘯(うそぶ)くと、西条は笑みをこぼして煙草を取り出した。そこへ、悲壮な顔の玲奈が駆けつけた。 「アニキ大丈夫!?」 「大丈夫だよこのくらい」 「でも、血出てるよ?」 「心配無いって」 不安げに見上げる玲奈を宥(なだ)める叶に、後から来た瑠璃香が言った。 「駄目ですよ、止血しなきゃ」 「いや、そんな」 叶は断ろうとするが、瑠璃香はパンツのポケットから純白のハンカチを取り出して強引に叶の左肩へ当てがった。忽(たちま)ち、ハンカチが深紅に染まる。 「ありがとう」 叶が礼を言うと、瑠璃香は軽くかぶりを振ってから西条に向かって告げた。 「健康増進法で、室内は全面禁煙ですよ」 火を点ける寸前で注意された西条が、不満そうに唇を尖らせて反論した。 「え〜? 硬い事言うなよ、半分外みてぇなもんだろうがよ?」 「駄目

    ブラッド・ライン #23 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/02/23
    そろそろ畳みに入ります。
  • ブラッド・ライン #22 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム

    雄叫(おたけ)びと共に金髪に飛び蹴りをらわせたのは、ブルーのスーツに身を固めた西条だった。その右手にはスマートフォンを持っている。横合いから顔面に革の底をぶつけられた金髪が勢い良く吹っ飛び、後の三人が思わず足を止めて金髪の行方を目で追った。 西条はわざとらしく膝の辺りを軽くはたくと、叶に向かって胸を反らせて微笑んだ。 「正義の味方、参上! なんつって」 叶が何かを言うより早く、後ろから玲奈が喚いた。 「あー! ハイエナ!」 想定外の方向からの声に、西条の膝から力が抜けた。 「ちょっとちょっと、勘弁してよせっかくこうやってマサ・ダンダの服でおめかししてんのに」 抗議する西条に、叶が呆れ顔で訊いた。 「こんな所で何やってんだ? トップ屋が欲しがるネタなんかここには無いぞ」 「別に己だって好きで来た訳じゃ、ってともちん後ろ!」 西条の指摘を受けた叶が振り返った刹那(せつな)、早川のナイフが顔

    ブラッド・ライン #22 - こぶし探偵ともちん(松田悠士郎) - カクヨム
    IDEA_JAM_U46
    IDEA_JAM_U46 2022/02/22
    早川の元ネタはバレバレだな。